JAL・ANA「国内線共同運航」は実現するか…“実質赤字”の苦境が生んだ異例の蜜月

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●この記事のポイント
JAL・ANAが2025年、グランドハンドリング機材の共同利用と国内75空港でのシステム統一を実施。ビジネス客消失・円安・人件費高騰により国内線が”実質赤字”構造に陥るなか、コードシェア実現に向けた地ならしが加速。独占禁止法・マイレージ棲み分け・安全基準の3つのハードルを検証する。

「JALとANAが手を組む」——少し前まで、そう聞けば業界関係者は苦笑いするしかなかった。かつて熾烈なシェア争いを繰り広げ、互いの路線に対抗ダイヤを投入し続けた両社は、長らく「航空2強の不倶戴天の敵」として語られてきた。

 しかし、2024年から2025年にかけての動きは様相を一変させた。グランドハンドリング(地上支援業務)の機材共同利用、国内75空港での搭乗ゲート・保安検査システムの統一化——。これらは単なる「コスト削減策」ではなく、業界再編の前触れとも読み取れる構造変化だ。

 ポストコロナの黒字化報道の陰で、国内線の収益構造はいまだ修復されていない。旅客数が戻っても、利益が戻らない。そのパラドックスが、かつてのライバルを協調へと向かわせている。

●目次

国内線の不都合な真実…旅客数は回復しても利益は戻らない

●ビジネス客という「高単価の柱」の喪失

 コロナ禍を経て定着したリモート会議は、国内線にとって致命的なダメージを与えた。東京—大阪、東京—福岡といった幹線の主力顧客だったビジネスパーソンの多くが、出張そのものを大幅に削減したのだ。

 JALの開示資料によれば、国内線の旅客数は2024年度にコロナ前水準に近づいたものの、収入単価の回復は旅客数の回復に追いついていない。理由は明白だ。ビジネスクラスや正規運賃での搭乗が減り、観光目的の早割・割引運賃が売上の大半を占めるようになったからである。

「コロナ前、国内幹線の収益の6割はビジネス客の正規運賃が支えていた。それが3割を切っている路線すら珍しくなくなった今、従来の路線維持モデルは根本から崩れています。旅客が増えているのに利益が薄い『見た目の回復』こそが、経営判断を急がせる最大の要因です」(中村哲也/元大手航空会社収益管理部長・航空経営コンサルタント)

●レジャー需要の「量は多いが単価は低い」という構造的矛盾

 訪日外国人の急増や国内観光需要の高まりは、一見すると追い風に見える。だが、レジャー客が選ぶのはLCC(格安航空会社)対抗の超割引運賃か、早期予約割引がほとんどだ。ANAが2023年に導入した「シンプルプライス」、JALの「ウルトラ先得」などの低価格商品群が販売の主力となっており、客単価の引き下げを自ら進めているに等しい。

 LCCとの競合を避けられない以上、フルサービスキャリア(FSC)としての価格優位性は消滅しつつある。それでも機内サービス・整備・訓練コストは変わらない。結果として、国内線は「量で稼いでコストで消す」という収支構造に陥っている。

●「公租公課の減免」と補助金なしには成立しない採算

 見落とされがちなのが、コロナ対策として続いた空港使用料の減免措置や燃油高騰に伴う補助金の問題だ。国土交通省は段階的に減免を縮小しているが、それが利益を直撃している。航空アナリストの試算では、これらの特例措置を除いた場合、国内線単体では実質的な赤字に転落する路線が幹線を含めて複数存在するとされる。