【完結】伊達騒動秘録 ~ 左近、影に潜む。友と猫が見た伊達の闇~

アルファポリスの第11回 歴史・時代小説大賞 奨励賞を授賞した作品です。

【あらすじ】



江戸時代初期、仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動(寛文事件)」。その渦中、伊達屋敷に二人の男が料理人として仕官する。一人は吉良左近、もう一人は今川徳松。元は取り潰された某藩の浪人で、今は共に伊達家の厨房で腕を振るう。

左近は普段、ぼんやりとして掴みどころがなく、「昼行灯」と揶揄されるほど。しかし、その実態は幕府から伊達家の内情を探るべく送り込まれた凄腕の密偵だった。妻の千代は、そんな左近の全てを受け入れ献身的に支える。

一方、徳松は左近の無二の親友。明朗快活な美丈夫で、屋敷の女中たちから熱い視線を送られるが、本人はどこ吹く風。何よりも猫と、そして親友の左近と過ごす時間を大切にしている。

千代は実の兄である徳松に対してはなぜか素っ気ない。

伊達藩では、幼い藩主・伊達亀千代(後の綱村)の後見人である伊達兵部宗勝と、藩の実権を握ろうとする家老・原田甲斐らの対立が噂され、不穏な空気が漂っていた。

左近は料理人として日常に溶け込みながら、密かに情報を収集し、騒動の真相に迫ろうとする。

徳松は、親友である左近の時折見せる鋭い眼光や謎の行動に気づきつつも、詮索することなく彼を見守る。

しかし、伊達家を揺るがす大きな陰謀が動き出す中で、徳松もまた、その渦に巻き込まれていく。

猫好きが高じて屋敷内外の猫と心を通わせる徳松が、思わぬ形で事件解決の糸口を見つけることも。

騒動が激化するにつれ、左近の密偵としての任務は困難を極めていく。

親友である徳松との関係、そして愛する妻・千代への想いの間で葛藤しながらも、左近は己の信念と使命を貫こうとする。

やがて、藩主毒殺未遂疑惑、重臣たちの暗闘、そして幕府をも巻き込む刃傷沙汰へと発展する伊達騒動。

そのクライマックスで、左近と徳松は、それぞれのやり方でこの未曾有の危機に立ち向かうことになる。

果たして二人は、巨大な陰謀の真相を暴き、伊達家を、そして自らの大切なものを守り抜くことができるのか。
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