才能なしと言われた俺、実は最強の強奪者でした
四十代の社畜として、仕事に追われる毎日を送っていた男。
休む暇もなく働き続けた彼は、ある日突然その人生を終える。
そして次に目を覚ましたとき――彼は異世界の少年、ゼウスとして生まれ変わっていた。
前世で十分すぎるほど働いた。
だから、二度目の人生では絶対に頑張らない。
出世もいらない。
名誉もいらない。
英雄にもなりたくない。
ただ暖かい布団でゴロゴロして、好きなときに寝て、のんびり平和に暮らしたい。
――それがゼウスの唯一の願いだった。
ところが、そんな彼の平穏な生活を邪魔する少女が一人。
近所に住む幼馴染、メヴ。
真っ赤な髪をツインテールに結んだ勝ち気な少女で、ゼウスが部屋でゴロゴロしていると、朝から容赦なく叩き起こしてくる。
「ちょっとゼウス! いつまでゴロゴロしてんのよ!」
「俺は今、人生で一番大切なことをしてるんだ」
「何よ、それ?」
「休息」
「そんなものは後!」
こうしてゼウスの平穏な毎日は、今日もメヴによって破壊されていく。
そんなある日、師匠であるヘラから二人に命じられたのは、森に出現した魔物の討伐だった。
魔法を覚え、冒険者としての経験を積むための簡単な訓練。
――そのはずだった。
森の奥で二人を待っていたのは、本来なら浅い階層に存在するはずのない凶悪な魔物。
ジャイアント・スライム。
メヴの火炎魔法すら通じず、巨大な粘液の触手が彼女へと襲いかかる。
絶体絶命。
その瞬間。
いつもヘラヘラしていたゼウスの表情から、笑顔が消えた。
「……うちの可愛い幼馴染に、汚い液かけてんじゃねぇよ」
そしてゼウスは、魔物へ手を伸ばす。
彼には、誰にも知られていない特殊なスキルがあった。
――【強奪(ステール)】。
触れた相手の能力やスキルを、自分のものとして奪い取ることができる異常な力。
魔物に触れた瞬間、ゼウスの脳内に声が響く。
《スキル【物理耐性】を獲得しました》
《スキル【粘液射出】を獲得しました》
奪った力を、そのまま自分の力として使用するゼウス。
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