夢の子

「生まれてきてくれて、ありがとう」



 授業中に同じ夢を共有する「明晰夢」に迷い込んだ、幼なじみの紬と奏汰。

 その不可思議な空間で、二人の意図とは無関係に紬の腹部が膨らみ、一人の赤ん坊が産み落とされる。

 紬は夢の中に留まって子を育てると決めるが、奏汰はそれを拒んで現実へと戻っていく。

「幻(げん)」と名付けられたその子は、現実よりも遥かに速く進む夢の時間の中で、紬を母親として慕い、十七歳の青年へと成長していく。

 しかし、夢の中での幸福な歳月と引き換えに、現実世界における紬の身体は衰弱し、深い昏睡状態に陥ってしまう。

 自分が母親の命を削る存在であることを悟った現は、紬を現実の世界へ引き戻すため、ある決断を下す。
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