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夏休みは海で冒険なのだ(完結)

海の家で涼むのだ

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「やれやれ。やっと迷惑な連中がいなくなった」

 変な大人たちに遠慮する必要もなくなったので、子どもたちは浅瀬で水遊びしたり、遊泳エリアで泳いだりし始めた。

「ピュイッ(ピアディ、試しに泳いでみる?)」
「ぷぅ(も、もちょっとあとで試すのだ)」

 どうしても怖い。
 遊泳エリアでは、泳げない仲間のはずのサナちゃんが、友達と一緒にバタ足しているのが見えた。

「ぷぅ(サナたんに先をこされてしまったのだ)」

 落ち込みつつ、ユキノとルシウス君をお供に岩の辺りを散策してみることにした。

「わ、ウミウシ!」
「ピィ!?(踏んじゃったー! グニャッていったー!)」

 ルシウス君とユキノが騒ぐ中、ピアディは波打ち際の、岩の影の水溜まりに小さなタコさんや海老さんを見つけた。
 波で水溜まりに入ってしまったものたちのようだ。

「ぷぅ(このよは弱肉強食。いずれ強きものにくわれてしまうかもだけど、今は母なる海にもどるがよいのだ)」

 タコは昨日、勇者君に食べさせてもらっていたピアディだが、それはそれ、これはこれ。

 えいっ、と短い前脚で上手く、小さな海の生き物たちを波の間に戻してやるのだった。



 ハッと我に返るともうお昼近い。
 太陽が高いところにあって、随分と気温も上昇してきている。

 岩の上にへばりついて日光浴をしていたピアディは、乾いていた。

「ぷぅ(われ、ひからびウパルパになりそうなのだー)」
「もう、ピアディ! だから保護ジェル塗りなさいって言ったでしょ!」

 ルシウス君に水筒の中の水をかけられると、まさに甘露のごとく。
 乾燥していた表皮にしっとり潤いが戻ってきた。

「海の家に行こうか。そろそろランチの時間だしね」
「ピュイッ」

 ユキノのお口にぱくっとくわえられ、そのまま海から上がってきた子どもたちと一緒に向かうことにした。



「ようこそ、海の家へ」

 出迎えてくれたのは、ウエイター姿の鮭の人さいあいだ。
 現れた青銀の髪の麗しの美青年に子どもたちはビックリしている。というより宰相様がフランクな態度で登場したことに二度ビックリだ。

「あれ。他にお客さんはいないの?」

 サナちゃんが不思議そうに店内を見回す。
 木の壁やテーブルのある店内は百席近い席があったが、来客はピアディや子どもたち十数名しかいなかったからだ。

「今日は冒険者ギルドの〝夏休み子ども冒険者教室〟の皆で貸し切りなんだ。飲食代は参加費に含まれてるから、好きなものをご注文どうぞ」

 にっこり笑いかけられて、女の子たちばかりか男の子まで照れて頬を真っ赤にしている。

「ぷぅ(うむ。さいあいは美しいひとなのだ。存分に愛でるがよいのだ)」

 ピアディは寛容なウーパールーパーなので、鮭の人さいあいがモテている様子にも誇らしげのドヤ顔である。

「冷たいレモネードはどうかな? 甘酸っぱくて美味しいですよ」
「甘いのが苦手な人用には、甘さ控えめのライムを使ったライムエードもあるよー」




 こちらはウェイター姿の金髪薄緑目の聖女様ねえやの彼氏だ。さっそくガラスピッチャーの飲み物を皆に配っている。

 店内はブッフェ形式……と思いきや、黒髪黒目の勇者君が目の前で焼き物を作ってくれるようだ。
 その勇者君の前にあるのは、小さな半円の穴が無数に開いた鉄板である。

「タコ焼き……ならぬ海鮮焼きをご提供だ。お好きな具をどうぞ!」









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