婚約破棄は結構ですので、その断罪書にご署名をいただけますか〜署名ひとつで断罪を覆す令嬢の書類仕事〜
「アデライド・フォン・ヴァイセンブルク。貴様との婚約を、破棄する」
建国祭前夜、三百人が集まった夜会の中央で、王太子はそう宣言した。
罪状は、想い人への毒殺未遂。日付も場所も証人も、すべて彼の口から語られた。すべて嘘だった。
弁明すれば逆上と言われ、泣けば誤魔化しと言われる。だからアデライドは、ただ一言こう答えた。
「――承知いたしました。ただ一点だけ、お願いがございます」
正式な断罪録を作り、ご署名と王太子印を。
王太子は笑い、読み返しもせずに署名した。この男は昔から、書類を読まない男だった。
貴賓席で、母が倒れる音がした。
剣も毒も魔法も使わない。彼女が握ったのは、手数料銀貨三枚の申立書ただ一枚。
書式十七番――公文書記載事項の訂正申立。
「別にいい、とは申しません」
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