異世界無双クリーナーライフ~すみません、うちの掃除機が勝手に魔王を吸い込んでしまいまして~
俺の名前は阿久津葦雀(あくつ よしきり)。来月四十歳になろうとしている平凡な日本人だ。都会の一角に拠点を構える大企業と契約している、数いる清掃業者の一人である。
その日も俺は、長年愛用してきたボロい掃除機と小さなロボット掃除機を片手に、うんざりするくらい広々としたビルの清掃作業に明け暮れていた──と思ったら、一緒に働いていた業者仲間と共にいつの間にか見たこともない場所へと迷い込んでいた。獣の耳や尻尾が生えた人間、人の言葉を喋るアホみたいにでかい犬、そして飛び交う炎や光の球……ひょっとしてこれは、昨今の漫画とかでよく見る『異世界転移』ってやつなんじゃないか?
所持品はスマホ、いつもの掃除機、そして勝手に俺について来るようになったロボット掃除機だけ。俺自身に特にスーパーパワーが身に付いたわけでもなければ、魔法が使えるようになったわけでもない。当然金もない。一緒に異世界入りした同僚たちは色々と物凄い能力に目覚めたっていうのに、理不尽だ。
同僚たちには使えない役立たずの足手まといとして早々に見捨てられ、俺は一人凶悪な魔物だらけの土地に置き去りにされる始末。異世界に来て早々終わった俺の人生……なんて最初は考えていたけれど、異世界に来たことで俺の代わりにとんでもない進化を果たした道具たちのお陰で、俺は快適かつ充実した異世界ライフを送ることに。
え、あの時の連中が訪ねて来てる? 異世界勇者として魔王に目をつけられて殺されそうだから助けてほしいって?
……この世界に来た時に同じことをお前たちに言った俺を、その時お前たちはどうしたっけかなぁ?
『不要なゴミ』と認識した存在は古代魔法の隠蔽効果だろうが異次元の邪神だろうが問答無用で吸い込む掃除機と、吸い込んだ存在をエネルギー資源化してリサイクルできるアイテムボックスとしての性能を備えたスマホ(親切ロードマップ&時計機能付き)を携え、元清掃業者のおっさんが世界最強の『掃除屋』として異世界生活を満喫する、そんな話。
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