きみに触れる風は、優しさでできている


春のはじまり。
桜が少しずつ開き始める季節、風があたたかくなってきた頃。

こゆのは、いつも通り教室の窓際の席に座っていた。
風がカーテンをふわりと持ち上げるたび、心の奥が少しくすぐったくなる。

そんな毎日に、少しだけ特別な“違和感”があった。

それは、彼の視線。

クラスの人気者。優しくて、みんなに好かれている男の子。
でも、なぜか彼の目は、時々こゆのだけを見ていた。

名前は、ゆうき。
さりげない仕草も、笑った横顔も、声のトーンまでもが優しくて。
だけどどこか、不思議な“距離感”があった。

彼と話すたび、胸がふわっと浮かんで、
でも、それが“恋”なのかどうか、まだよくわからなかった。

春の風が、教えてくれる。
この心のざわめきが、ただの憧れじゃないことを。

そしてこゆのは、まだ知らなかった。
この春、彼の言葉が、自分の世界を変えてしまうことを。
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