あけぼの色の15分

★第8回ほっこり・じんわり大賞で【優秀賞】を賜りました。ご一読くださった皆様、本当にありがとうございます。

「終電を逃したから泊めてくれない?」

 私の日常は、あの日、彼の——葉加瀬梨斗の一言で大きく色を変え、形を変えた。
 夜の十一時、閉店したスーパーの前で、紺青色の空の下、私は大きく息を吸って、止める。
 ずっと、うまく呼吸ができない。
 頭の中をぐわらんぐわらんと鳴り響く耳鳴りのような音が、本当の私を身体の外へ締め出していく。

 きみは私を、廃園後の遊園地に連れ出した。
 まるでピエロが私の手をとって踊るように。 
 くるくる、ころころ、楽しそうに無邪気に笑うきみは、私の心をまるごとすくっていく。


 観覧車は回り始める。

 誰かのために生き続けるきみを乗せて。

 15分間だけ、きみに会える。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

城北高校二年生の深町日彩は、母親と祖母と三人暮らし。
仕事に忙しい母親を支えるために、家事全般を担い、認知症の祖母の”ケア”に勤しむヤングケアラー。
——このまま、他人のために生き続けるしかないのかな……。
不安を抱えていた日彩だったが、深夜に買い出しに出かけたスーパーの前で、梨斗という少年に声をかけられる。
梨斗は日彩を廃園後の遊園地に連れ出した。
観覧車が回る15分間だけ、きみに会える——。
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