収納魔法で朝ごはん、明け方の塔で君と暮らす
王都の魔術倉庫で働いていたアフェレシは、責任ばかり押しつけられる暮らしに疲れ、王国北東の盆地セレス外縁へ移り住む。彼が使えるのは、物をしまうだけでなく、温度や湿度、香りまで整えて保管できる希少な収納魔法。静かに暮らすため借りた古い倉庫での新生活は、窓から入ってくる狩猟補助員カースィン、帳簿と記録に強いニカ、遅刻ばかりなのに腕は確かな石工モナリス、肩の力を抜いたまま皆を動かすラユン、そして湯気の立つ薬草茶で人の心をほどくオードリーに巻き込まれ、少しずつにぎやかになっていく。
薬草採集、保存食づくり、共同浴場の修理、夜の勉強会、灯り市の支度。アフェレシの収納魔法は、暮らしを整える力として集落に根づいていった。だが夏の終わり、王都から使者が現れ、彼がかつて保管していた「明け方の塔」の記録を理由に呼び戻そうとする。さらに秋口には、盆地を脅かす薄明獣の大移動が迫っていた。
強大な一撃で敵を倒す話ではない。薬草の香り、干し果実の甘さ、湯気の立つ茶、誰かの朝ごはんを守るために積み重ねた備えが、やがて土地そのものを救う力になる。
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