婚約破棄ですか? 損切りの機会を与えてくださり、本当にありがとうございます

「エリーゼ・フォン・ノイマン! 貴様との婚約は、今この瞬間をもって破棄する! 僕は真実の愛を見つけたんだ。リリィこそが、僕の魂の伴侶だ!」

「確認させていただきますが、その真実の愛とやらは、我が国とノイマン家との間で締結された政略的・経済的包括協定――いわゆる婚約契約書よりも優先される事象であると、そのようにご判断されたのですか?」

「ああ、そうだ! 愛は何物にも勝る! 貴様のように、金や効率ばかりを語る冷血な女にはわかるまい!」

「……ふっ」

 思わず、口元が緩んでしまいました。
 それをどう勘違いしたのか、ヘリオス殿下はさらに声を張り上げます。

「なんだその不敵な笑みは! 負け惜しみか! それとも、ショックで頭がおかしくなったか!」

「いいえ、殿下。感心していたのです」

「なに?」

「ご自身の価値を正しく評価できない愚かさが、極まるところまで極まると、ある種の芸術性を帯びるのだなと」

「き、貴様……!」

 殿下、損切りの機会を与えてくださり本当にありがとうございます。

 私の頭の中では、すでに新しい事業計画書の第一章が書き始められていました。
 それは、愚かな王子に復讐するためだけの計画ではありません。

 私が私らしく、論理と計算で幸福を勝ち取るための、輝かしい建国プロジェクトなのです。
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