子豚で聖女なお嬢様と、転生者で性悪な執事サマ

【全三十三話 一日一話更新(日によって二〜四分割更新)】

 永松秀久は、日本生まれ日本育ちの平凡な男である。
 彼はあらゆる食を好き放題に楽しんだ結果、デブによるデブの為のエリートデブとなり、二十歳で死んだ。
 同時刻、とある世界でカコリスという名の男も死んだ。
 彼は幼い頃から飢えに苦しみ、周囲から虐げられ、最後には魔王討伐のため、聖女の肉壁として死んでいった。

 カコリスは、女神の慈悲により世界を巻き戻し、人生をやり直せることとなった。
 だが、持ちかけられた提案は、ある事情から魔王を倒したい女神の都合によるものでしかない。

 カコリスは激昂し、一度は強く拒絶した。
 けれども、断れば代わりに秀久が世界に必要な『カコリス』をやることになる──と聞かされると、全ての不満を飲み込み了承しかけた。
 故に秀久は彼を吹っ飛ばし、代わりをやる、と宣言した。
 食の楽しみを一つも知らないで死んでゆく者がいるなんて、秀久にとっては我慢がならなかったのだ。

 結果、カコリスとして転生した永松秀久は、前回の世界と同じように公爵家に金で買われ、どういう流れか、お嬢様の専属執事となった。
 未来の聖女様は、もはや既にクソ傲慢最悪小デブお嬢様と化している。聖女の持つ光魔法には、周囲の者を従える『依存性』があるのだ。
 前回の世界における聖女リーザローズは、その醜悪な性根を特異な力によって更に増長させ、繰り返した世界で凄惨な歴史を作り出していた。

 その効果を打ち消すことが出来るのは、どうやらカコリスとして転生し直した永松秀久しかいないらしい。

 世界がどうなろうと知ったこっちゃないが、この世界での美味いものが食べられなくなるのは困る。
 破滅の世界を作り出す傲慢最悪聖女様の手綱を握りつつ、なんとか無事に魔王を倒さねばならない。

 ということで、今日も秀久はお嬢様を元気に罵倒する。
 ……いや、なんか、依存性を打ち消すのに罵倒がいるらしいので。

 口は悪いが面倒見はいい転生執事と甘やかされた我儘公爵令嬢が、仲良くバトりつつ時を重ねて魔王討伐を成し遂げ、最強鈍感両片想いに陥って、最後には色々巻き込んでとっても幸せになる話。

※6話〜29話までキレ気味照れ隠しお嬢様×超絶鈍感執事のラブコメをかましている
※超絶鈍感だが恋の自覚がないだけでずっと愛はある

※小説家になろうにも投稿しています
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