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違う提案
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特にこの人、そりゃオーラは凄いけど見た感じ普通の人間だし、格好も現代ぽいし、神様だなんて全然思えない。
私は首を傾げながらも、とりあえず彼の話に乗ってみた。
「人間の祈りが力になるんでしょう? 私がもうちょっと祈ってみれば力取り戻せるんじゃ?」
「祈りとは純粋無垢な気持ちでないと駄目だよ。もうあんたの祈りに力はない」
「じゃあしょうがないですね。誰かから祈られるのを待っててください」
私が言うと、不機嫌そうにこちらを見た。ムスッとした顔で目を細める。
「神を救うなんて経験、中々できることじゃないぞ」
「別に誰にも自慢できないことですし」
「一回だけで十分だよ」
「なんて品のない神様だ」
「あれか。あんた、処女か」
デリカシーのかけらもない発言が飛び出して、私はつい近くに置いてあったクッションをやつに向かって思い切り投げつけた。ナイスコントロール、顔面にクリティカルヒット! クッションが落ちて見えた奴の顔は非常に不愉快そうだった。
顔を熱くなるのを自覚しながら非難する。
「やっぱり神様なんかじゃない! こんなの神様なわけない馬鹿!」
「神に暴力を振るう人間も中々いない」
「あなたが変なこと言うからでしょうが!」
信じられない! なんて失礼な男なんだ!
確かにこの人生一度も彼氏は出来たことはない。つまりはそういうことだが、初対面の男にそんなことを指摘されたくない!
男は落ちたクッションをベッドの上に放りながらいう。
「神に幻想を抱きすぎだな。さっきも言ったが神とは結構気まぐれだし悪戯好きだよ。無論してはならない最低ラインは守るが」
「守ってない神がここにいますけど?」
「照れるな、悪いことじゃない。そうか、それは確かにあんたにとっては難しい提案だったな。頑なに拒否するのも無理はない」
サラリと言う彼に面食らう。失礼なことを言ったかと思えばアッサリこちらの気持ちを汲んでくる。なんだか不思議な人だと思った。
一体どこからどこまでが本当の話なんだろう。私は何か騙されているのだろうか。
男はふうと息を吐いて天井を仰ぐ。無駄に綺麗な黒髪が揺れる。何かを考えているようだった。
私は黙ってその光景を見つめていた。
「ではその方法は諦める。そのかわり」
しばらくし男はゆっくりこちらに顔を向けた。人間離れした美しい顔面に、不覚にもドキッとする。
形のいい薄い唇から、言葉が漏れた。
「ここにしばらく住ませてもらう」
「………
は?」
情けない声が出た。ぽかん、と口を開けて彼の顔を見る。
「ほんの少しでいい」
「へ? いや、え??」
男はわたしの狭い部屋を見渡しながら言う。
「あともう少し力が欲しいんだ。少しだけ。あんたの陽の気なら、近くにいるだけで多少移ってくる。だからしばらく側に置いて欲しいんだ」
「……は」
「だからあと少し力をくれ。よし。これでいこう」
決まった、とばかりに大きく頷いた彼を慌てて止める。勝手に話を進めないで欲しい、しかもとんでもない話を!
「ちょちょおお! 待って! 私同意してませんから!」
「これなら迷惑かけないだろう? 抱かせてくれなくてもいいんだ」
「大迷惑ですから!!」
こんな狭い部屋に男と二人住むなんて冗談じゃない。神様だか悪魔だか知らないけど、そんなの無理に決まっている。
でも彼は意外そうに目を丸くした。断られるなんて思ってなかった、という顔だ。
「なぜ?」
「だっ、だって部屋に知らない人がいるなんて緊張するし!」
「人じゃないぞ」
「そうだけどっ、見た目は普通の人だし!」
「襲わないぞ」
「そう言う問題でもなくて!」
私が慌てふためきながら拒否すると、彼は非常に分かりやすく眉を下げた。ゆっくりと頭を垂らし、悲しそうに口をつぐむ。
私は首を傾げながらも、とりあえず彼の話に乗ってみた。
「人間の祈りが力になるんでしょう? 私がもうちょっと祈ってみれば力取り戻せるんじゃ?」
「祈りとは純粋無垢な気持ちでないと駄目だよ。もうあんたの祈りに力はない」
「じゃあしょうがないですね。誰かから祈られるのを待っててください」
私が言うと、不機嫌そうにこちらを見た。ムスッとした顔で目を細める。
「神を救うなんて経験、中々できることじゃないぞ」
「別に誰にも自慢できないことですし」
「一回だけで十分だよ」
「なんて品のない神様だ」
「あれか。あんた、処女か」
デリカシーのかけらもない発言が飛び出して、私はつい近くに置いてあったクッションをやつに向かって思い切り投げつけた。ナイスコントロール、顔面にクリティカルヒット! クッションが落ちて見えた奴の顔は非常に不愉快そうだった。
顔を熱くなるのを自覚しながら非難する。
「やっぱり神様なんかじゃない! こんなの神様なわけない馬鹿!」
「神に暴力を振るう人間も中々いない」
「あなたが変なこと言うからでしょうが!」
信じられない! なんて失礼な男なんだ!
確かにこの人生一度も彼氏は出来たことはない。つまりはそういうことだが、初対面の男にそんなことを指摘されたくない!
男は落ちたクッションをベッドの上に放りながらいう。
「神に幻想を抱きすぎだな。さっきも言ったが神とは結構気まぐれだし悪戯好きだよ。無論してはならない最低ラインは守るが」
「守ってない神がここにいますけど?」
「照れるな、悪いことじゃない。そうか、それは確かにあんたにとっては難しい提案だったな。頑なに拒否するのも無理はない」
サラリと言う彼に面食らう。失礼なことを言ったかと思えばアッサリこちらの気持ちを汲んでくる。なんだか不思議な人だと思った。
一体どこからどこまでが本当の話なんだろう。私は何か騙されているのだろうか。
男はふうと息を吐いて天井を仰ぐ。無駄に綺麗な黒髪が揺れる。何かを考えているようだった。
私は黙ってその光景を見つめていた。
「ではその方法は諦める。そのかわり」
しばらくし男はゆっくりこちらに顔を向けた。人間離れした美しい顔面に、不覚にもドキッとする。
形のいい薄い唇から、言葉が漏れた。
「ここにしばらく住ませてもらう」
「………
は?」
情けない声が出た。ぽかん、と口を開けて彼の顔を見る。
「ほんの少しでいい」
「へ? いや、え??」
男はわたしの狭い部屋を見渡しながら言う。
「あともう少し力が欲しいんだ。少しだけ。あんたの陽の気なら、近くにいるだけで多少移ってくる。だからしばらく側に置いて欲しいんだ」
「……は」
「だからあと少し力をくれ。よし。これでいこう」
決まった、とばかりに大きく頷いた彼を慌てて止める。勝手に話を進めないで欲しい、しかもとんでもない話を!
「ちょちょおお! 待って! 私同意してませんから!」
「これなら迷惑かけないだろう? 抱かせてくれなくてもいいんだ」
「大迷惑ですから!!」
こんな狭い部屋に男と二人住むなんて冗談じゃない。神様だか悪魔だか知らないけど、そんなの無理に決まっている。
でも彼は意外そうに目を丸くした。断られるなんて思ってなかった、という顔だ。
「なぜ?」
「だっ、だって部屋に知らない人がいるなんて緊張するし!」
「人じゃないぞ」
「そうだけどっ、見た目は普通の人だし!」
「襲わないぞ」
「そう言う問題でもなくて!」
私が慌てふためきながら拒否すると、彼は非常に分かりやすく眉を下げた。ゆっくりと頭を垂らし、悲しそうに口をつぐむ。
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