異世界家具職人 気が付いたら獣人たちの家具を作ってました
この世界の家具は、なぜか人間用ばかりだった。
注文家具職人の榊原伊織は、長年守ってきた工房を閉めた夜、突然異世界へ迷い込んでしまう。
魔法もなければ、戦う力もない。伊織にあるのは、使い慣れた工具と九年間磨いてきた家具作りの腕だけだった。
たどり着いた街の宿で出会ったのは、灰色の耳と尻尾を持つ狼獣人の女性・リナ。
人間用の椅子では尻尾を挟んでしまうため、リナはいつも背もたれを使わず、椅子の端に浅く腰掛けていた。
「仕方ないだろ。椅子は人間が使うものなんだから」
「違う。身体に合わない椅子のほうが、出来が悪いんです」
伊織が作ったのは、尻尾を挟まず、安心して背中を預けられる一脚の椅子。
その椅子をきっかけに、伊織のもとには変わった依頼が舞い込むようになる。
巨人族の体重を支える大きな椅子。
翼人が翼を広げたまま眠れる寝台。
角を傷めずに休める枕に、水の中でも腐らない棚。
やがて伊織はリナとともに、小さな家具工房を開くことになる。
家具を作るたび、誰かの暮らしと居場所が生まれていく。そして、ずっと一人で家具を作ってきた伊織にも、いつしかリナの隣という大切な居場所ができていく。
これは、家具職人の女性と素直になれない狼獣人が、一脚の椅子から始める、穏やかな異世界お仕事百合物語。
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