幕末貸本幻燈記
文政の世からおよそ三十年。嘉永六年、黒船来航に沸く江戸・雑司が谷。
かつて豆吉屋の看板娘・お蜜に懐いた禿(かむろ)「小春」は、今や「お月(おつき)」と名を変え、亭主・新吉(しんきち)と貸本屋「文亀堂」を営むたくましい女貸本屋になっていた。
三十年経っても変わらぬ姿で、あの男は今日も現れる。
名を「宵書堂(よいしょどう)」
頭巾を目深に被り、大きな背負い箱を担いだ底知れぬその男は、変わらぬ丁寧語で今日も嘯く。「本とは畢竟、毒か薬と同じでございます」と。
だが――お月が手に入れ、小さな騒動を起こしたある一枚の瓦版。
彼が関わったとおぼしきそれを宵書堂は「渡していない」と言う。
黒船、大地震、疫病、そして戦火。音を立てて崩れゆく江戸、十五年の歳月。
誰かが、この泰平の終わりを望んでいる――。
情緒と狂気の連作時代ミステリ、待望の第二部。『大江戸貸本幻燈記』続編『幕末貸本幻燈記』、本は人を救うのか、それとも殺すのか。幕末ビブリオミステリーここに開幕。
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