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第46話 元悪役聖女が愛される日々
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「ベアトリス様! 復帰、おめでとうございます!」
「ありがとう!」
「今日の講義、とても楽しみです!」
「ええ、私もよ。またあとでね」
すれ違う聖女や見習いたちに笑顔で挨拶を返し、ベアトリスは白いローブをはためかせて神殿を歩く。
無事に汚名返上を果たしたベアトリスは、正式に聖女として職場に復帰することとなった。
連日の報道で事件の真相を知った人々は、みな温かく迎えてくれる。
だが、セレーナの身代わりとして周囲を騙していた罪悪感が、ずっとベアトリスの心に残り続けていた。
「この場をお借りして、まずは謝罪をさせてください。元聖女セレーナの振りをして皆様を騙していたこと、どうかお許しください。そして追放される前の私は、周りにいる方々への感謝を忘れ、配慮に欠ける言動をしていました。本当にごめんなさい」
復帰式でこれまでの自身の至らなさを真摯に謝罪し、深々と頭を下げる。
するとベアトリスに贈られたのは、歓迎の拍手と同僚からの優しい言葉の数々だった。
「実は私、面倒な仕事をベアトリス様に押し付けていました。聖女失格ですわ、ごめんなさい」
「わたしも、ベアトリス様に厄介な案件をこっそり回していました……。謝るのは私たちの方ですわ」
「私は先輩聖女様との関係に悩んでいた時、ベアトリス様が支えになってくださいました。心から感謝しております」
「ベアトリス様は、自分自身を守るためにも知識は重要だと教えてくださいました。おかげでわたし、やる気が出て筆記試験に合格できたのです! ありがとうございます!」
「図書館で優しく声をかけてくださって、とても嬉しかったのを今でも覚えています。また新しく出た本のお話をさせてくださいませ!」
追放される前は、神殿で孤立し、味方は誰もいなかった。
けれど今は、自分の復帰を喜んでくれる仲間がいる。
「みなさん……ありがとうございます」
感激のあまりこみ上げる涙を拭うと、そばに控えていたユーリスが小声で「良かったな」と囁いた。
その声色があまりに優しく慈愛に満ちていたものだから、ベアトリスはまた涙が止まらなくなってしまい、ユーリスに「泣きすぎだろ」とからかわれるのだった。
復帰式を終えると、さっそく忙しい一日の始まり。
初日だというのに、スケジュールはすでに公務と講義でパンパンに埋まっている。
さらに、仕事の合間に質問や個別の相談を受け付けているため、目の回る忙しさだ。
それでも、また聖女として働けるのが嬉しくて仕方ない──!
あっという間に時間が過ぎ去り、ベアトリスは達成感に包まれながら、その日の業務を終えた。
「ふぅ、終わった~!」
「お疲れさま。初日から容赦ない仕事量だったな」
「これくらい全然平気よ、まだまだ働けるわ!」
「やる気なのは結構だが、復帰早々無理して倒れないでくれよ」
「心配してくれているの? ユーリスってば優しいのね、ありがとう」
素直に感謝を告げれば、彼も嬉しそうに「どういたしまして」と微笑する。
良い機会だと思ったベアトリスは、ずっと気になっていたことを彼に尋ねた。
「ねえ。ユーリスは私のことを嫌っていたでしょう? なのに、どうして見捨てずに助けてくれたの?」
「ん? 嫌っていた? まぁ、確かに追放される前の君は、刺々しくて可愛げがなかったな」
「うぐっ」
「でも、嫌ったことなんて一度もない」
「え? そうなの?」
「そうだよ。嫌っていたら、雨の中わざわざ傘を持って追いかけたり、可愛げのない態度を改めるよう忠告したりしない。俺はそんなにお人好しではないから」
「そっか……嫌われてなかったんだ。良かった」
ベアトリスがほっと胸を撫で下ろすと、ユーリスは優しい微笑から一転、真剣な顔で迷いなく告げた。
「俺が心配するのはベアトリスだけだ。君は俺にとって特別な人だから」
まるで告白のような言葉に胸が高鳴る。
「特別な、人……? それって……」
ベアトリスが口を開いたその瞬間、ゴーンゴーンと時刻を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「ベアトリス、今夜はお父上のお見舞いに行くんだろう? そろそろ出ないと、病院の面会時間に間に合わないよ」
「あっ、本当だわ! 急いで着替えてくる。ユーリス、ちょっと待っていてね!」
「ああ、分かった」
「ありがとう!」
「今日の講義、とても楽しみです!」
「ええ、私もよ。またあとでね」
すれ違う聖女や見習いたちに笑顔で挨拶を返し、ベアトリスは白いローブをはためかせて神殿を歩く。
無事に汚名返上を果たしたベアトリスは、正式に聖女として職場に復帰することとなった。
連日の報道で事件の真相を知った人々は、みな温かく迎えてくれる。
だが、セレーナの身代わりとして周囲を騙していた罪悪感が、ずっとベアトリスの心に残り続けていた。
「この場をお借りして、まずは謝罪をさせてください。元聖女セレーナの振りをして皆様を騙していたこと、どうかお許しください。そして追放される前の私は、周りにいる方々への感謝を忘れ、配慮に欠ける言動をしていました。本当にごめんなさい」
復帰式でこれまでの自身の至らなさを真摯に謝罪し、深々と頭を下げる。
するとベアトリスに贈られたのは、歓迎の拍手と同僚からの優しい言葉の数々だった。
「実は私、面倒な仕事をベアトリス様に押し付けていました。聖女失格ですわ、ごめんなさい」
「わたしも、ベアトリス様に厄介な案件をこっそり回していました……。謝るのは私たちの方ですわ」
「私は先輩聖女様との関係に悩んでいた時、ベアトリス様が支えになってくださいました。心から感謝しております」
「ベアトリス様は、自分自身を守るためにも知識は重要だと教えてくださいました。おかげでわたし、やる気が出て筆記試験に合格できたのです! ありがとうございます!」
「図書館で優しく声をかけてくださって、とても嬉しかったのを今でも覚えています。また新しく出た本のお話をさせてくださいませ!」
追放される前は、神殿で孤立し、味方は誰もいなかった。
けれど今は、自分の復帰を喜んでくれる仲間がいる。
「みなさん……ありがとうございます」
感激のあまりこみ上げる涙を拭うと、そばに控えていたユーリスが小声で「良かったな」と囁いた。
その声色があまりに優しく慈愛に満ちていたものだから、ベアトリスはまた涙が止まらなくなってしまい、ユーリスに「泣きすぎだろ」とからかわれるのだった。
復帰式を終えると、さっそく忙しい一日の始まり。
初日だというのに、スケジュールはすでに公務と講義でパンパンに埋まっている。
さらに、仕事の合間に質問や個別の相談を受け付けているため、目の回る忙しさだ。
それでも、また聖女として働けるのが嬉しくて仕方ない──!
あっという間に時間が過ぎ去り、ベアトリスは達成感に包まれながら、その日の業務を終えた。
「ふぅ、終わった~!」
「お疲れさま。初日から容赦ない仕事量だったな」
「これくらい全然平気よ、まだまだ働けるわ!」
「やる気なのは結構だが、復帰早々無理して倒れないでくれよ」
「心配してくれているの? ユーリスってば優しいのね、ありがとう」
素直に感謝を告げれば、彼も嬉しそうに「どういたしまして」と微笑する。
良い機会だと思ったベアトリスは、ずっと気になっていたことを彼に尋ねた。
「ねえ。ユーリスは私のことを嫌っていたでしょう? なのに、どうして見捨てずに助けてくれたの?」
「ん? 嫌っていた? まぁ、確かに追放される前の君は、刺々しくて可愛げがなかったな」
「うぐっ」
「でも、嫌ったことなんて一度もない」
「え? そうなの?」
「そうだよ。嫌っていたら、雨の中わざわざ傘を持って追いかけたり、可愛げのない態度を改めるよう忠告したりしない。俺はそんなにお人好しではないから」
「そっか……嫌われてなかったんだ。良かった」
ベアトリスがほっと胸を撫で下ろすと、ユーリスは優しい微笑から一転、真剣な顔で迷いなく告げた。
「俺が心配するのはベアトリスだけだ。君は俺にとって特別な人だから」
まるで告白のような言葉に胸が高鳴る。
「特別な、人……? それって……」
ベアトリスが口を開いたその瞬間、ゴーンゴーンと時刻を知らせる鐘の音が鳴り響いた。
「ベアトリス、今夜はお父上のお見舞いに行くんだろう? そろそろ出ないと、病院の面会時間に間に合わないよ」
「あっ、本当だわ! 急いで着替えてくる。ユーリス、ちょっと待っていてね!」
「ああ、分かった」
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