麦畑の見える丘で


辺境の星、ガルドープに住んでいた少女ミトと老婦アリスは、血の繋がっていない者たちだった。

戦争で母を亡くしたミトを引き取ったアリスは、10年間、彼女が独り立ちできるように、「星の子」としての教えを説いていた。

いつか、誰もが星を旅立つ日が来る。

戦争で焼き尽くされる野原が目の前にあっても、私たちはいつか、星と決別する日が来る。

だから畑に野菜や穀物を植えて、雨が降る日を待ちなさい。


アリスは言うのだった。

私たちは誰もが完璧ではないのだと。

「言葉」はいずれ形を失い、銀河星雲の星屑の中に消えていく。

運命の砂時計はすでに落ち始めている。

時間の経過の中で絶えず物事は変化し、昨日まであったものは、流れ星となって消えていく。


ミトは願っていた。

いつか星を旅立つ日が来たとしても、2人で過ごしていた時間が、世界のどこかで残っていくこと。

いずれ星と決別する日が来るとしても、アリスに伝えたかった想いが、——「言葉」が、闇の中に閉ざされてしまわないことを。
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