フィックスド辺境伯家の秘密（元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎）

とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0018：とあるパン屋さん

⭐︎ここは、フィックスド辺境伯領のとある街中に建てられた『首都代理市役所』の目の前にある小さな広場。

「はーーい！　デモ参加者のみなさん、良い感じに隊列を組めて最高っすよーー‼︎　集団行動は完璧なんで、もっと、強面こわもてを意識してみてください‼︎　説得力が高まりますからね！　いいです、いいです、その域っす！　……その睨みが漢を高めるんすよね！　はい、オールオッケー‼︎（謎の掛け声をかけながら、警棒を振り回して交通整理をしている体のチャラ男警察官ロベルト）」

「増税反対‼︎（相変わらず、とある女性のプラカードを掲げるパトリック殿下）」

「「「増税反対‼︎（殿下の仲間達）」」」

「あと、マリア様のお身体が細すぎる‼︎　もっとご飯を食べさせて、健康体を維持しろ‼︎（デモとは関係ないことも主張する殿下）」

「「「国民全員に健康を‼︎（殿下に合わせる仲間達）」」」

「経済が下火なら、まず最初に貴族が溜め込んでいる財産から切り崩せ！　言っておくけどな、……僕は、持ってた財産を全部売り払って、赤字を抱え込んでいた数々のお店を復活させたんだぞ‼︎（大真面目殿下）」

「「「殿下、すごいっす‼︎（シンプルな感想）」」」

「貴族の鏡！（殿下の偉業を素直に尊敬するノア）」

⭐︎と、そこに、一組の老夫婦がやってきた。

「パトリック殿下、お勤めご苦労様です。（老爺）」

「素晴らしいデモですわね。（微笑む老婆）」

「あっ、パン屋さんのおじいちゃんとおばあちゃんじゃないか！　二人とも、お元気でしたか？（即座にデモを中断する殿下）」

「はい。パトリック殿下のおかげで、パン屋もギリギリ持ち堪えることができました。その節は、ありがとうございます。（夫婦揃ってお辞儀）」

「いえいえ、……僕は、お二人の作るあんぱんが大好きでしたから、援助するのは当たり前ですよ。最近は、息子さんが後を継がれていらっしゃるんですよね？（微笑み殿下）」

「はい。一生懸命頑張っています。（嬉しい老爺）」

「まだまだ主人の作るパンには及びませんが、『パトリック殿下に美味しいあんぱんを食べてもらうんだ！』って、張り切っていますよ。（微笑み老婆）」

「そうですか。それは、とても楽しみだな。（殿下）」

「ところでパトリック殿下とご友人の皆様、お腹は空いていませんか？　息子が作ったサンドイッチを持ってきたのですが、小休憩には、うってつけですよ。（背後に置いてあったリヤカーを殿下の前に持ってくる老爺）」

「「「「──っ‼︎（お、美味しそう‼︎　全員）」」」」

「実は息子も、本日のデモに参加したかったのです。……しかし、もし国の上層部に楯突いたのがバレでもしたら、お店の方に税務調査が入ってくる可能性があるので、ヘタに動けないと、嘆いていました。（曇り顔の老爺）」

「息子本人は捕まっても構わないって思っているのですが、お店で働いてくれている従業員のことを考えると、みんなに迷惑がかかるからって……。本当、世知辛い世の中ですわね。（寂し顔の老婆）」

「……わかりますよ。僕も、息子さんのお気持ち、充分に理解しています。（キリッと殿下）」

「「パトリックでんか……。（うるうる老夫婦）」」

「息子さんだけではありませんからね。提携を結んでいるサービス業のお店は、軒並み動けません。だから、気に病まないで。みなさんが気持ちよく働けていないと、僕達のやってる事に、意味なんて無いのですから。（殿下）」

「……はい。息子に、しかと伝えておきます。（老爺）」

「パトリック殿下、デモ隊の皆様、今日は、本当にありがとうございました。……国のやる事を見て、私達は諦めていましたが、お若い世代の方々が、こんなにもお国のことを考えてくれているだなんて、……感謝の限りですわ。（涙を拭う老婆）」

「おじいちゃん、おばあちゃん、これからです。もう少しだけ、僕達のやる事を見ててください！　地味かもしれないけど、みんなの利益になれるように頑張りますから‼︎（ウインク殿下）」

「「はい‼︎（老夫婦）」」

「それでは息子さんが作ったサンドイッチを美味しくいただきますね。息子さんによろしく伝えてください。（殿下）」

「ええ。多めに持って来ましたので、パトリック殿下のご友人の方々もどうぞ‼︎（老爺）」

「「「ありがとうございます‼︎（仲間達）」」」

「よしっ、みんな、休憩だ‼︎　休憩中も、周囲の方々のご迷惑にならないよう、集団行動厳守だよ‼︎（仲間達に指示する殿下）」

「「「ラジャー‼︎（左手を振り上げる仲間達）」」」

「あっ、サンドイッチの配布における交通整理は、俺がやるっす！　その代わり、俺も、サンドイッチを頂いてもいいですか？（殿下にちゃんと聞く警察官ロベルト）」

「もちろんさ！　……みんな、こまわり君がサンドイッチを手配りしてくれるみたいだから、ここで一列に並んでね！」

「「「ラジャー‼︎（素直な仲間達）」」」

「……。（殿下って、やっぱり凄いお方だよな。 さりげなくサンドイッチの列に並んでいるノア）」

「はいはーーい‼︎　サンドイッチは、全員分ありますからね！　安心して並んでください‼︎（警棒を振り回して誘導するロベルト）」

「「「ラジャー‼︎（素直に並ぶ仲間達）」」」

⭐︎デモは、休憩後に再開する事になった‼︎


⭐︎　　⭐︎　　⭐︎（おまけ）


⭐︎殿下達が和気藹々と休憩している頃。
⭐︎首都代理市役所内二階の窓際にて。

「……けっ、烏合うごうの衆どもが目障りだな。（謎の男）」

「上院議員様、大変申し訳ありません！　今すぐやめさせてきます‼︎（大慌てなお役人）」

「……よい。……アヤツらなぞ、ミジンコ以下だ。……もう少ししてから、楽しいお遊びといこうか。（悪い顔な男）」

「──っ⁉︎（殿下、逃げて下さい‼︎　役人）」

⭐︎殿下の背後に悪の影が近づいている⁉︎