フィックスド辺境伯家の秘密(元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

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とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0025:突然の風に、髪ハラリ

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【side ノア・フィックスド(新米当主)】

⭐︎ ここは、フィックスド辺境伯邸母屋、応接間。中心に設置された各ソファには、ノアとパトリック殿下に、隣の辺境伯領主コレクトが深々と腰を下ろしている。


「ステビア侯爵がコレクト君に恨み、ね。(真剣殿下)」

「こ、コレクト様、……何故首都のステビア侯爵が、コレクト様の命を狙っていらっしゃるのですか?(汗だくノア)」

「うむ、よくぞ聞いてくれた、ノア君。ちょっと意味がわからない話なのだが、よかったら参考にしてくれ。…………それは、ほんの少し前の事だった。……『首都圏活性化税』の方針が大々的に打ち出されて、かなり時間が経った後に、父上の古い友人であるステビア侯爵が、私の屋敷にやってきたのだ。(真剣なコレクト)」

「は、はい……。(緊張感漂うノア)」

「あれは、長雨がやまないときに開いたディナーでの一場面だった。……ステビア侯爵は、とても上機嫌なお顔で『首都圏活性化税に大いに協力してくれ。(ニヤリ)』と私に言った。私は、『領民に対して申し訳ないから、お隣のフィックスド辺境伯の政策を丸パクリして、領民に還元する。』と答えたら、和やかだった空気が一瞬で硬直した。……あの時のステビア侯爵のまるで悪魔のように険しい表情は忘れられないな。(謎のドヤ顔をキメるコレクト)」

「……えっ、丸パクリ⁉︎ コレクト様、流石にその言い方は、やめましょうか!(汗が止まらないノア)」

「うん? 自分で考えたわけではないからな、完全にノア君の政策を丸パクリしているだろう?(きょとんコレクト)」

「いやいや、若干、アレンジをしていらっしゃいますから、丸パクリではないですよ! それに、増税への対策について、コレクト様には沢山相談にのってもらいましたから、これはもう共同と言った方が正しいと思います!(恋敵だが、冷静にコレクトを賞賛するノア)」

「ノア君……。(うるうるお目々なコレクト)」

「コレクト様、自信を持ってください。フローレンス領が平和なのも、コレクト様とコレクト様の奥様がしっかりなされていらっしゃるからなんですよ。(真剣ノア)」

「……のあくううううん‼︎(ガバッと立ち上がってノアに突進するコレクト)」

「「────っ⁉︎(困惑のノアと殿下)」」

⭐︎ と、そこへひとつの風が、何故かノアを襲う‼︎ 

「──っ⁉︎(すんでのところで風を避けるノア)」

⭐︎ スパッという風の音と共に、ノア付近の床一面へ、とある髪の毛の残骸がハラリハラリと落ちまくった‼︎

「えええええ⁉︎ かかかぜが吹いて襟足が切れたあああ⁉︎(自身の後頭部をわさわさ触りまくって、襟足が無くなったことに呆然とするノア)」

「カマイタチがいるのかな。(ノアの真横で謎の遠い目をしながら黄昏れている殿下)」

「いやいや、絶対違うでしょ⁉︎(地面に落ちた元襟足を掬い上げて、悲しみに暮れるノア)」

「……ノア君、……なんかごめん。(落ち込んでいるノアの肩に手を置くコレクト)」

「いえ、俺が丹精込めて伸ばしていた大事な大事な襟足だけで済んで、本当によかったです。(かなり根に持つノア)」

「……私が男に抱きつこうとすると、よく強い風が吹くんだよな。……なんでかはよくわからないが、本当にごめん。」

「い、いいですよ。……ただの大切な襟足だけですから。」

「……男に抱きつく、か。……カマイタチ君は、不思議な奴だな。……コレクト君、確証は、持てないんだけれど、……コレクト君の命を奪おうとしているのは、ステビア侯爵でも弟さんでも、親御さんでもないよ。(キリッと殿下)」

「……私のランキングは、大外れしたのですか⁉︎(自作ランキングに対して謎の自信を今まで持っていたコレクト)」

「うん。……なぜなら、ステビア侯爵は、絶賛警察に連れて行かれてるし、コレクト君のご家族に人を殺めるという行動は、なかなか難しそうなんだよね。もし、コレクト君に手をかけるなら、おそらく暗殺者を雇いそうだけど、僕の持っている情報網では、殺し屋系のみんなは、今、一生懸命着ぐるみを縫っているからさ。(ドヤ顔殿下)」

「きぐるみ……?(きょとんなコレクト)」

「そう、着ぐるみ! 今から僕とサネユキとノアと愉快な仲間達で結成するクーデター組織『スピカ』の資金源を作るために、着ぐるみを売っているんだよ!(なかなかな殿下)」

「えええ⁉︎ あの着ぐるみって、その為に作りまくっていたのですか⁉︎(今知ったノア)」

「あれ? ノアには言ってなかったっけ?(殿下)」

「初耳ですよ! 今日のデモ中にとある組織を作りたいって聞いただけですからね!(反論のノア)」

「……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないが、スピカを作ることには変わりない。(謎のドヤ顔殿下)」

「……あの、パトリック殿下、……そのに、……私も入れてください! ……お願いします‼︎(ガバッと直角にお辞儀するコレクト)」

「「────っ‼︎(コレクトを見る二人)」」

「正直、クーデターってどういう意味なのかよくわからないけれど、私もパトリック殿下やノア君達の力になりたい!(瞳に強い光を秘めているコレクト)」

「……コレクト君、その言葉、待ってたよ‼︎(コレクトの左肩に手を置く殿下)」

「パトリック殿下……。(とても嬉しそうなコレクト)」

「至急、面接試験を開いて、コレクト君の適正を見てみようじゃないか!(とてもやる気に満ち溢れた殿下)」

「はい‼︎ 宜しくお願いします‼︎(やる気満々コレクト)」

「…………面接試験?(何か嫌な予感がするノア)」

「ノア、今からサネユキを呼ぶから、会議室に面接会場をセッティングしちゃって!(ウキウキワクワク殿下)」

「は、はい!(瞬時に応接間から出るノア)」

「コレクト君、……今からやる面接に無事合格すれば、君も晴れてスピカの一員だからね!(きゅるるん殿下)」

「はい! 頑張ります‼︎(瞳が煌めくコレクト)」


⭐︎ 果たして、パトリック殿下の思惑は如何に⁉︎
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