フィックスド辺境伯家の秘密（元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎）

とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0037：謎の女性

⭐︎ ここは、フィックスド辺境伯邸母屋会議室。

「あの、すみません、……貴女は、ここフィックスド家のメイド長ですよね？（額に汗を浮かべながら、謎の女性と対話を試みるノア）」

「昔々のことでした……。（ノアをスルーしながら昔話を始めるとある謎の女性）」

「……。（ええええ⁉︎　嘘だろ⁉︎　ノア）」

「……。（ノア、ファイト！　心中で慰める殿下）」

「……。（ノアよ、いつか良いことがおこるから、今は辛抱だ。 ノアの肩に手を置くサネユキ）」

「とある貴族学校に通う、とある女学生の前に、ロールパンを咥えて急いで走っていたとある貴族学生が現れたのです‼︎（目をカッとさせながら語りまくる謎の女性）」

「……はあ。（頭の中が疑問符なノア）」

「所謂、恋愛小説のシチュエーションってヤツだね‼︎（キャッキャして聞いている殿下）」

「ほう。……ロールパンが走っているとは、魑魅魍魎だな‼︎（とんでもない聞き間違いをしているサネユキ）」

「皆さんの想像通り、その女学生と貴族学生は、その場で衝突しました。そのとき、咄嗟に、女学生が貴族学生をお姫様抱っこしてしまったのです‼︎　……女学生は、悩みまくりました。目の前でロールパンを咥えている貴族学生のアホ面を見て、その日の午前中に行われる予定の古語試験内容を、全てど忘れしてしまったから。……嗚呼、かわいそう。……運命の相手に出逢った代償が、古語の追試だなんて。……しかし、神様は、女学生のすぐ側にいらっしゃいました。たまたまその古語の追試で、ロールパンを咥えたアホ面の貴族学生との因縁の再会を果たしたのです！（声高らかに語りまくる謎の女性）」

「…………はあ。（それで一体、何が言いたいんだ？　この事が、キースとアルバートさんとの遺伝にどう関係するんだろう？　至極冷静なノア）」

「よくわからないけど、感動だね。（疑問符パレードノアの真横でドバドバ感動の涙を流す殿下）」

「トルネードでは、ロールパンが追試の勉強をもするのか……。（勘違いに気づかないまま、カルチャーショックをうけるサネユキ）」

「その女学生は、貴族学生に対して、熱く、激しいアタックを繰り広げました。……自身の想いを伝える。それは、なかなか勇気のいるものです。……女学生からの熱い想いに、貴族学生も嬉しそうに返していました。……そして、学校を卒業してから、結婚をしようと。……貴族学生は、女学生と、約束をしたのです。（両目に涙を溜める謎の女性）」

「…………はあ。（話についていけないノア）」

「──しかし、二人の仲は、突如、暗闇の中に置いていかれたのです……‼︎　貴族学生の年の離れた兄の手によって……‼︎（全身から負のオーラを放出させる謎の女性）」

「…………うん？（何故か心当たりがあるノア）」

「────っ⁉︎　駄目だ、ヤンキー辺境伯！　キース、……叔母上からヤンキー辺境伯を離してくれ‼︎（咄嗟にコレクトを自身のマントの中に入れて、謎の女性とノアとの間に入る裏当主）」

「────っ‼︎　わかりました、兄上‼︎（ノアを立たせて、会議室内の一番端に引っ張って連れて行くモヒカン）」

「……ふう。……ギリギリ助かっ……。（離れたヤンキー辺境伯を見て一安心した裏当主）」

「（間髪入れずに）アルバート、……私の心のお話が不服なのかあ‼︎　それと、私のことは、叔母ちゃんではなく、『お姉様』とお呼び‼︎（油断した裏当主に、踵落としをくらわす謎の女性）」

「グハアアッ⁉︎（謎の女性から踵落としをくらって、気絶する裏当主）」

「アルウウウ⁉︎（バタンと倒れた裏当主を心配して、覆い被さるコレクト）」

「──それとコレクトちゃん、……アルバートと一緒になるって決めたのなら、今の正妻とはキッパリ別れなさい‼︎　不義理こそが、人を駄目にするのよ‼︎（ビシッと謎の女性）」

「ガーーン‼︎（さりげなく釘を刺されて気まずいコレクト）」

「……まずいな。……アニキ、……一度叔母上が暴走すると、止めるのは、殆ど不可能です。……もし、俺に何かあったとしても、アニキだけは、逃げて……。（言い終わらないうちに、ノアの視界から消えて行くモヒカン）」

「（間髪入れずに）モヒカンも、鳥の巣も、やめんかーい！　シークレット・フローレンス本家を舐めんてんのか、コラア‼︎（ノアに忠告していて油断しまくりだったキースに頭突きとヘッドロックをかけて、シークレットフローレンス本家教育を施す謎の女性）」

「グボッ、……カハッ‼︎（その場に崩れ落ちるモヒカン）」

「キーースーー⁉︎（キースを必死に抱きしめるノア）」

「……フフッ。……やっと、この時がやってきましたわ。……何年、いや、何十年、待ってきたのかしら。（コツコツと低いヒールを鳴らしながら、ノアの目の前までやってきた謎の女性）」

「……俺に用があるんですよね？（険しい表情のノア）」

「……まあ、そうですわね。（不敵に微笑む謎の女性）」

「それなら、もう、これ以上、アルバートさんや、コレクト様、キースには、何もしないでください‼︎　勿論、殿下とサネユキ様にも‼︎（必死なノア）」

「「ノア……。（感動の殿下とサネユキ）」」

「それは、……ヤンキー辺境伯様のこれからの選択次第ですわよ。（目をキッと吊り目にする謎の女性）」

「──っ⁉︎（怖すぎてヒュッと喉の奥が鳴るノア）」

⭐︎ すると、そこへ、能天気なノアの叔父がやってきた！

「ノアーー！　やっと、本継承の日取りが決まったよーー‼︎（とても上機嫌なノアの叔父）」

「────っ⁉︎（一気に態度を変える謎の女性）」

「あれ、アメリ？　一体どうしたの？（きょとん叔父）」

「「「──っ⁉︎（疑問符だらけのノア達三人）」」」

⭐︎ ノアの叔父と、この謎の女性との関係とは⁉︎