乱暴な人形

『記憶力』

キラキラが目に痛いから、
逃れるように眠ろうとしたのですが、
まぶたがないのを忘れていました。

水面を見上げると、
醜い犬がのぞいていました。

ついでにさざ波がおさまり、
醜くなくなりました。

肺呼吸がうらやましいなと思い、
やわらかな毛もいいなと羨みました。

肌がうろこで硬い。

歯も舌もなくて味がしない。

セックスができない。

たくさん愚痴が思い浮かんだけど、

気づいたら皿にのり、
身体が刺身にされていました。

ぼくはまだ生きています。

楽しそうな誰かと誰かの声のなかで、
ぼくはしずかに目を閉じようとして、
まぶたがなかったのを思い出しました。
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