夜明けの皇子と宵の月
神が罪を犯す時、それはいつも愛から始まる。
月を崇めるルナリア皇国。この国に数百年に一度生まれるという奇跡の存在、「明けの明星」。
朱金の髪に紫水晶の瞳を持つ皇子シエルレインは、その類稀な美しさゆえに幼い頃から無数の欲望と陰謀に晒されてきた。
十三歳のある日、シエルレインは事故に遭い、瀕死の重傷を負う。目覚めた時、彼がいたのは現実ではなく——自分の精神が作り出した夢の世界だった。
三年間、夢の中でシエルレインの傍に寄り添ったのは、黒い大きな猫の姿をした謎の男、暁月。治癒術と魔術を操り、現実でシエルレインの身体を治療しながら、夢の中では師として、守護者として、彼を支え続けた。
やがてシエルレインは目覚める。変わり果てた自分の身体と、仮面の向こう側に残った美しさを抱えて。
そして明かされる、暁月の正体と、シエルレインに隠された運命。
彼はただの皇子ではない。千年前から続く呪われた宿命の中心に、「明けの明星」はいる。
成人の義が近づくにつれ、世界を覆い始める異変。幼馴染のセシリアが胸に秘める罪と誓い。妹メルウィントが抱える、言葉にできない感情。
そして——シエルレインを「リリスの器」と呼ぶ者たちが、静かに動き始める。
千年の時を越えて交わされた約束は、果たして報われるのか。
神と人の境が曖昧だった時代の神話が、今、再び動き出す。
これは星を愛した月の物語。
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