はい、私がヴェロニカです。

宮廷に仕えていた下級貴族のヴェロニカは、母の遺言により亡き祖父と師弟関係にあったフェラレーゼ伯爵家に身を寄せた。
幼い頃、兄のように慕ったガイウスはフェラレーゼ伯爵家の当主となっていた。
王家のお茶会で披露される焼き菓子を任されていたヴェロニカは早速キッチンでその才能を発揮する。

人当たりが良く陽気なヴェロニカは誰からも好かれる素晴らしい女性だった。
王家からも、貴族からも、領民からも、聖職者からも好かれていた。

「あの女……っ」

只一人、ガイウスの妻ソレーヌを除いては。

女騎士として功績をあげた後に、夫に先立たれ、年下のガイウスと再婚したソレーヌは不妊に悩んでいた。
実は前の夫との間に息子アレクシウスがいたが、その難産と直後の戦闘で深い傷を負ったことが原因だとされていた。

アレクシウスは修道騎士を目指しており、ガイウスの養子になることを拒んでいる。

「あの頃のちっちゃなヴェロニカを思い出すよ。可愛かったんだ」

ガイウスがヴェロニカを見つめる。
それは兄のようなあたたかな慈愛の眼差しに違いない。

それでも、ガイウスはヴェロニカを迎えてからというもの可愛い幼児の姿を思い描くようになった。

ヴェロニカ……
夫婦二人の穏やかな幸せを、よくも……

だからソレーヌは命じたのだ。
ヴェロニカが誰からも軽蔑され、その幸せが壊されるように。

「ヴェロニカ。私の代わりにガイウスの子を産みなさい」
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