人魚熱

 なぁ。

 唇の隙間から呟いた。

「俺たちはいつだって、何かに溺れてて、何かの熱に浮かされてるんだ」

 恋に溺れて、嫉妬に溺れて、快楽の熱に浮かされる。どうしたんだ。哲学者みたいじゃないか。そうからかおうと開きかけた唇を、また塞ぐ。

 熱が欲しいんだ。生きてる体温が。すがるように俺を見上げた目は熱をたたえたように潤んでいる。

 人魚の熱はもう人とは重なれない。

*****


俺たち3人は幼なじみだ。
生まれてからこれまで家族のように過ごしてきた。

だけど、中学、高校、大学と歳を重ねるたび、進む道が少しずつ分かれていく。

先を進む幼なじみたちへの羨望、焦燥、それから嫉妬。

あるとき、一人が奇妙な体調不良を訴える。

歪みだす関係を必死でつなぎ留めながら葛藤する「俺」の物語。
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