使用人の我儘

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上手くできない(R15

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 小さい頃から毎年、夏休みこそ我が宿敵だった。お暇を出されても、ここ以外に住む家などない俺にとっては一人でポツンとしてなきゃならないし。
 食う寝るに困らないだけありがたいけど、それと寂しさとは別の話。

 でも。今年の夏は秋尋様と過ごせる!
 地獄の中の仏と言わんばかりに見せていただいていた暑さでしっとりしているお姿も、純粋な気持ちで……。

「今日は特に暑いな……」
「あ。秋尋様、汗が」

 はあああー。色っぽい。ダメだ。別の意味で不純だ。
 去年はここまでじゃなかったのに。あの時の秋尋様の顔を妄想だけでなくリアルで知ってしまったから、下半身に直撃する。
 しかも今年は、ハンカチで汗を拭っても拒まれたりしないし!

「ああ。すまない。ふふっ……。背伸びしなくていいぞ。ほら」

 それどころか笑って屈んでくれちゃう。鎖骨にたまる汗が見える。ちゅって吸ってしまいたい。
 当たり前のように俺に拭かせてくれるのが、もうねー……。




「秋尋様が可愛すぎてツライ」
「景山くん最近、本当に二言目にはそれだよね」

 校内は空調完備でとても涼しい。屋敷の中も。だから暑そうにしている秋尋様を見られるのは登校途中だけなんだけど、その短い時間だけで存分にヤられる。
 俺の愚痴……と見せかけた惚気に毎回付き合わされている金井くんは、さっき返ってきたテストの答案用紙を重ねて机の上でトントンと揃えた。

「で。期末テストの点数はどうだったの?」
「……それもツライ……」

 そう。大問題だ。すべてにおいて秋尋様のお役に立ちたい使用人として。わざわざ通わせていただいてるから夫妻にも申し訳ない……。
 学校は楽しいし、秋尋様は可愛いし、本当に幸せなんだけど……。定期的にあるテストにて、勉学に身が入ってないのが明らかになってしまうのがマズイ。
 幸いなのは、性欲を発散させるために運動をするので、身体の方はなまらないってことかな。秋尋様をお護りするのが最重要だから。

「えー。何点?」
「ん……」
「僕よりいいじゃない……。そういえば平坂くんも、今回は良くなかったって言ってたよ」
「え、珍しいな」
「ケアレスミスして、満点を逃したって……」
「機械か何かかな?」

 金井くんや広川くんとそれなりに遊んでるように見えるのに。
 元のデキが違うんだろうなあ。羨ましいなあ。
 俺はたくさん勉強しないと、人並みになれないから。

 なのに! 秋尋様が可愛すぎて……! 学校でも妄想に勤しんでしまい、机から立てなくなったりとか……。

「また近衛先輩にご褒美とか出してもらったら?」
「ご褒美……」

 さすがにそれは図々しすぎないかな。でも話してみようかな。
 最近の秋尋様はお優しいし、案外快く引き受けてくださるかも!

 ……と、そんな淡い期待を抱いていたけれど、秋尋様もテストの点が下がったらしく沈んでいて、そんなことを言い出せる雰囲気でもなかった。
 自分が秋尋様にしたことを思うと、原因の一端は俺にもある気がしたし……。しばらく手を出すのは控えようと心に誓った。
 夏休みが始まったら接触も減る。お祭りやキャンプも待ってるんだから、せめてそれまでは我慢しなきゃ。
 勉強は勉強。遊びは遊び。しっかり頑張ろう。

 でも。秋尋様を想って一人で致すことだけはお赦しください。
 なるべく回数は減らすので。

 秋尋様の汗が染み込んだハンカチで乗り切れば大丈夫。
 数日くらいどうってことない。ほぼ一ヶ月近く、会えなかったことだってあるんだから、それに比べれば全然余裕。

 そう思っていた時期もありました。ええ。

 テスト勉強があったから、しばらく触れていなかったのがキツかった。せめてテスト明けに触らせていただいていれば、ここまでの飢えは感じなかった。
 寂しすぎる。朝晩、お世話をしにちょこっと顔をあわせるだけでは全然足りない。
 夏祭りまで、あと……。指折り数える日々が続く。

 ああ。人間って、一度手に入れた幸せを失うほうがツライものなんだなあ。少し前まではコレが当たり前だったのに。

 性欲を発散させるためではなく、寂しさを紛らわすため、昼間は毎日のようにトレーニングルームにいる。今日は俺によく護身術を教えてくれるボディーガードさんも利用していたから、まだ気が紛れた。
 ちょっと軽い感じなのがあれだけど、昔はセキュリティポリスをしていたとかで、強さは折り紙付きだ。
 どうやら俺と歳の近い息子がいるらしく、ずいぶんと可愛がってもらっている。

「そういえば夏祭りのボディーガード、春日さんがしてくださるって聞きました。息子さんのほうは大丈夫なんですか?」
「友達と行くんだってよ。母親たちが保護者でついてって、パパはお払い箱……。だから、せめてもお前たちを見守ってやるよ」

 俺より小さくても、友達同士で夏祭りに行ったりするんだ。衝撃的……。

「まあ……。見守るけど、祭りの開放感に唆されて、あまり変なことはしないでくれな。オジサン目のやり場に困っちゃうから……」
「な、なんの話をしてるんですか! 私は、秋尋様に、そ、そんなこと……」
「女のコたちをナンパしないでねーって話だったんだけど、ここで秋尋様の名前が出てきちゃうんだ、朝香クンは」

 ニヤニヤしている。意地が悪い。鉄の仮面をかぶるのにも慣れたものだけど、どうしてもこの人の前だと上手く取り繕うことができない。
 実は……春日さんは、初めは俺のボディーガードだった。母親が俺に接触をはかろうとするのを防ぐための。金で売ったくせに、取り戻そうとしてくるものなのか? とも思うし、実際に来たかどうかは知らない。知りたくもない。
 俺は母親と義父に色々されていたから、その精神ケアも春日さんがしてくれてた。
 だからまあ、俺は……。騙されるように、ポツリポツリと色んなことをこの人に話し、その流れでなんとなく秋尋様への気持ちもバレてしまっているのだ。

「もうチューくらいはしたのか?」
「してません!」

 もっとえっちなことならしてるけど。なんて言えない。
 キスなんて……。できるものならしたいですよ、本当に!
 秋尋様のファーストキス。いっそ知らないうちに奪ってしまおうかなんて、もう何度考えたことか。

「でも最近、2人ともいい感じだって聞くし」
「私が一方的に慕っていて、それを秋尋様が認めてくださっただけです」
「えー……。そうかなあ」
「そうです。どうしたんですか。いつもはこんなにしつこくないのに」
「それはあ……」

 春日さんが視線を逸した。

「お姫様が迎えに来てるから」
「えっ!」

 視線を追うと、確かに秋尋様が少し遠くからこちらを見ていた。
 秋尋様の匂いと気配に気づかないなんて、朝香、一生の不覚。
 春日さんはいつから気づいていたんだろう。本職の人はさすがに違う……。

 目が合うと、秋尋様はこちらに駆け寄ってきた。
 俺に会いに来てくれたんだと思うだけで心が震えた。

「ど、どうなさったんですか」

 ……声も震えた。横で春日さんが笑いを堪えている。

「お前が真面目に訓練を受けているのか、見張りに来てやったんだ。まさか邪魔だとは言わないよな?」
「当然です! いくらでも見てください!!」
「わたくしはちょうど帰るところでしたので、お2人でごゆっくりどうぞ」

 春日さんは恭しくお辞儀をし、俺の耳元に頑張れよと囁いて、さっさと帰っていった。

「ほ、本当に邪魔してしまったか?」

 おろおろと気にする秋尋様が愛おしい。頑張りたくなるからやめてください。
 春日さんが気を回してくれただなんて、夢にも思ってないんだろうなあ。

「いいえ! ちょうど休憩するところでしたので、会いに来てくださって嬉しいです!」
「見張りに来ただけだ」

 今日の秋尋様はツン多めだ。そこも可愛い……。
 そういえば朝もどことなく機嫌が悪かったな……。

「ならもう少し、走り込みをします!」
「あ、いや。休憩……するところだったんだろう。ゆっくり休め」
「でも秋尋様が見ていてくださるなら、俺、いくらでも走れる気がして……」
「いいから、僕の部屋へ来い」

 お部屋ですって? これは……えっちなことを命令していただける流れなのでは?
 いや。何度期待して、裏切られたことか。
 どうせ馬になれとか憂さ晴らしがしたいとか、そういう……。

「あっ、あの。俺、今日はかなり長い時間、運動してたんで……汗が……。お部屋に伺うならシャワーなどを浴びてからのほうが」
「そのままでいい」

 これ以上、誘惑には抗えない。
 俺はせめてもスポーツタオルでゴシゴシと汗を拭って、ホイホイとついていくことにした。
 秋尋様も俺と過ごしたいって思ってくれたのかなあ。嬉しいなあ。
 どうしても期待はしちゃうけど、えっちなことができなくたってお傍にいられるだけでも充分幸せ。




 秋尋様の部屋についた俺は、まずこれは妄想なのではないかと頭を疑った。
 俺、秋尋様好きをこじらせてついに幻覚を……? もっとも、こんな幻覚なら、大歓迎だけど。

「頼む、朝香……触ってくれ」

 ベッドでしどけなくなっている、秋尋様。
 まず、部屋に足を踏み入れたところで、汗臭い身体をすうーっと嗅がれた。
 驚いているすきに、もうこんな感じだ。

 触れとかではなくて、触ってくれ。懇願。お誘い……。
 いつもは俺が言わせたり、秋尋様も処理の延長的な感じで命令してくるので、こんな切羽詰まった様子は初めて見る。

 俺は俺で、ずっと我慢、してて……。秋尋様不足だったから、もうたまらない。
 ……あ。そうか。俺がしなかったってことは……。

「もしかして秋尋様、また、お一人では……?」
「……した」

 した。秋尋様がひとりで。えっちなことを……。
 想像するだけで鼻血が出そう。

「でも、上手くできなかった……」
「俺の顔が、浮かぶから……ですか?」
「それはもう平気だ。単純に、お前の手のほうが……き、気持ちよくて……、上手く、イケないんだ」

 はあ、と涙目で熱い息を吐かれて、下半身に痛みが走った。
 興奮しすぎてギュウギュウしている。キツめのスパッツだから物理的にも苦しい。

「お前のせいだぞ。責任を取れ」
「わかりました。毎朝、毎晩、させていただきます」
「い、いや、そんなには……」
「自分から言うのが恥ずかしいんでしたよね? でしたら多少強引に、俺から仕掛けませんと!」

 返事を待たず、秋尋様に触れた。もう我慢の限界だった。
 俺はひとりでもできるし、なんなら秋尋様の顔を想像するだけでもイケるけど、好きな人に触れたい気持ちはまた別物。
 何度でも気持ちよく、トロットロにしてさしあげたい。

「そうではなく、僕はそんなにしたくはなら……、んッ……馬鹿、舐めるのは嫌だと……。あ、んう……」

 先にお風呂にでも入ったのか、少し石鹸の味がする。トレーニングルームに来たのも、元からこのつもりだったのかと思うとたまらなかった。

「やだ、朝香、や……ッ」

 秋尋様に嫌だと言われたら、すぐにでもやめられるつもりでいた。
 でも今日はその甘い啜り泣きが、もっと、って聞こえる。もっとして、朝香って。

「あっ、あ、やぁ……。本当に、こんなの……。よすぎて、本当に自分で、できなくなるから……ッ」

 そんなこと言われたら、ますますやめられるわけないよね?
 口を窄めて全体を擦りあげ、喉の奥で先端をきゅうっと締める。吸い上げながら何度かそれを繰り返すと、口の中いっぱいにどろりと溢れた。絡みつくほど濃くて、飲み干すのが大変だったけど勿体ないから全部飲んだ。
 土に水が染み込むみたいに、乾きが満たされていく気がする。

「毎日俺がご奉仕するのに、そんなにしたくならない秋尋様がご自分でなさる必要などないのでは?」
「ひ、開き直るな。また飲むし……」
「でも気持ちよかったですよね?」
「……うん」

 ウン、だって。はあ……。もう、最高に可愛いな。可愛い……。もっと触りたい。久しぶりだし。

「しばらくしていなかったし、一度では足りませんよね」

 主に俺が。

「もう1回くらい抜いておきましょう」
「はぁ……ッ。ふ……、い……イッたばっかだから、ソコには本当に触るな!」
「でしたら、身体はどうですか……?」

 確認するように、腰のあたりを両手で挟んで撫であげると、秋尋様の身体がピクンと跳ねた。

「ん……ッ。なんか、ふ、フワフワする」

 俺は死ぬほどムラムラしてたまらないんですが。
 服をまくりあげて、ちんちんのかわりに乳首を吸ってみると、今日は気持ちの良さそうな声が上がった。

「あっ……。変、変だ……」
「ん……。でも、気持ち良さそうですよ?」

 小さく尖って、可愛い。俺に舐めてって言ってるみたい。
 唇で挟むと柔らかくって、もっと味わいたくなる。

 はあ……。ダメだ。も、無性に……秋尋様に、ちんちんを擦りつけたい。この白い綺麗な肌を汚したい。
 秋尋様のに擦りつけたら、秋尋様も気持ちよくなるかな……。

「あ、秋尋様……。俺のちんちん、秋尋のに擦りつけていいですか?」
「馬鹿、そんな顔で……ちんちん……とか、言うな!」

 そこですか。というか、もう、爆発しそ……。
 それに秋尋様がちんちんとか言ってるほうが破壊力が大きい。

「えっ……と。じゃあ、おちんちん」
「……ふ、ふふっ。それ、おをつけただけ……」

 あー……。可愛い。無理。
 汗で張り付いたスパッツを脱ぐのももどかしく、俺は腰を隙間なく秋尋様に押しつけた。

「いっ……! お前、穿いたまま……。ん……ッ」
「はあ、ぁ……。気持ちいですぅ、秋尋様……」
「朝香……」

 きゅうっと、俺の背中に手がまわった。秋尋様が自分の快感を追うように腰を揺らしたのを見て、完全に理性が焼ききれた。
 だって、こんなの。許してくれてるし。秋尋様が、俺を欲しがってくれてるし。嬉しすぎて涙が出る。

「朝香、それ、やだ……。布が、擦れて……変な感じする」
「俺のと直接ゴシゴシしたいってことですか?」

 脱ぎたい。でも気持ちよすぎて腰が止まらない。
 秋尋様も気持ち良さそうにしてる。とろけてる顔、凄い。この顔を俺がさせてるんだって思ったらたまらない。
 だって……秋尋様が俺のちんちんで気持ちよくなってるなんて……!

「あ……! や、やだやだ。待て、待ってくれ。お、お前の服に……あ、で……ッ、ん……」

 本気で焦ったような秋尋様の声と、捲れ上がった服の裾から忍び込むどろりとした欲に興奮し、俺も熱を吐き出していた。
 俺のスパッツ、外も中も大惨事……。いや、下着は穿いてるけど……。

「ば、馬鹿! どうするんだ、これ……。落ちないぞ」
「あっ! シーツで拭こうとしないでください! 被害が広がります!」

 でも布越しでこれとか、直接触れてたらどれだけ気持ちよかったんだろう。先っぽのほうチュッてくっつけたり……。
 うう。また勃っちゃいそう。秋尋様のでヌルヌルしてるし。これで擦ったら絶対に気持いい。

「お前でも、興奮して我を忘れるようなことが、あるんだな」
「も、申し訳ありません!」

 冷静に考えると、かなりとんでもないことをしてしまった。
 いくら秋尋様が嫌がってなかったとはいえ、間違いなくやりすぎだ。
 でもえっちだった。すっごくえっちだった。

「いや……。むしろ少し、安心した。いつも僕のことばかりで、お前、自分の欲は置き去りだから……」

 ちんちんを擦りつけられてこの反応。天使かな。
 夢みたいな気持ちよさだったし、実はここまで全部夢では?

「だが、やりすぎだ。しばらくは僕に触れるな。わかったな?」

 あっ。現実。
 元々我慢する予定だったけど、こんな可愛らしい秋尋様を見せられて、またオアズケだなんて地獄すぎる。

「返事は?」
「はい……。ですが、責任もお取りしたく……」
「朝香。お前も使用人なら、僕がしたい時を察するのも……仕事のうちではないのか?」

 雷が落ちたみたいな衝撃が身体を走った。
 た、確かに……! 俺は自分が秋尋様に触れたいという欲ばかり優先して。使用人失格だ。
 いや、普通に考えて、している行為自体がもうアウトなんだけれども。

「その通りです。俺の修行不足でした。これからは頑張ります! ですので、上手く察せていない時は、今日みたいに誘ってくださいますか?」
「誘っ……!? う、え……っ、わ、わかっ……わかった」

 ……いつまでも察せないままなのも、オイシイかもしれない。
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