収穫祭の主催の席を、夫が愛人に譲ったので離縁します。麦束を運ぶ女の子と成り上がり男爵は、まっすぐ私のところへ来ました
収穫祭の初日の夜会。伯爵夫人アンリエットが七年守ってきた主催の席には、夫の愛人が座っていた。町の子が運んできた最初の麦束まで、夫は横から取り上げて愛人に渡す。祭りの費用の穴を埋めてきたのも、パンの粉を原価で回してきたのも妻だとは知らずに。黙って席を譲り、帳簿と印を置いて家を出たアンリエットのもとに、口の悪い成り上がり男爵が現れる。「あんたの言う数は、量らなくていい」。支えを失った伯爵家は、祭りの締めの式で崩れはじめる。元サヤなし。全六話。
あなたにおすすめの小説
私の記念画を横取りした義妹は、王宮の除幕式で消える絵の具の罠を知る
「――この『暁の白百合』は、エマが描いたことにして王宮へ献上する。セシル、お前は今からキャンバスの隅にある自分の署名を消しなさい」
王太后陛下の生誕六十周年祝賀会に献上する記念画。モンフォール子爵家の長女セシルが三ヶ月かけて描き上げたその大作を、父と継母は義妹エマの作品として差し出せと命じた。逆らえば、亡き母の遺した画材もスケッチブックも焼き捨てる、と。
セシルは従ったふりをして、エマの新しい署名の上に「仕上げの保護ニス」を塗る。それは、強い光と熱を浴びると上の絵の具を消し去る、母直伝の感熱消色ワニスだった。
王宮の展示室で、彼女の指に残る群青の顔料に目を留めたのは、祝賀会の芸術監督を務めるジュリアン・ヴァルモア公爵。二年前から、名もなき絵師の絵を探し続けていた人だった。
「……どうだい、セシル。今夜から俺と、最高の共犯者になってくれないか?」
窃盗の濡れ衣を着せようとする義妹の企みを逆手に取り、迎えた除幕式の当日。天窓から差し込む朝日の下で、偽りの名が消えていく。
奪われた名前と誇りを、自分の絵筆で取り戻す物語。
身代わりの妻はもう不要ですね。離縁して国を出ます
重傷を負い荒廃した領地を抱える冷酷な侯爵、ベランジェ。
彼のもとへ嫁ぐはずだった美貌の妹ファヴィオラは逃げ出し、身代わりに差し出されたのは姉のエヴェルディスだった。
エヴェルディスは冷遇されながらも懸命に領地を立て直し、夫の傷を癒やし、領民に豊かな暮らしをもたらす。
だが、領地が潤い夫が武功を取り戻した途端、逃げ出していた妹が戻ってきた。
「お前のような身代わりはもう不要だ。離縁して出て行け」
夫の冷たい言葉に、エヴェルディスは取り乱すこともなく静かに離縁状へ署名し、一切の未練を捨てて国を出る。
向かった先は、彼女の才能を高く評価していた隣国の大公カジミールのもとだった。
一方、有能な妻を失った侯爵領は瞬く間に崩壊を始め、妹の身勝手な浪費と恐るべき嘘が次々と露見していく。
すべてを失い血の涙を流して復縁を懇願する元夫の前に、美しく気高い大公妃となったエヴェルディスが現れる。
忘れられた妃~帝国留学を終えた若き王は帝国から婚約者を連れ帰る~
3年間の帝国留学を終えて帰国の途にあるフォリウム王。
婚約者として帝国皇女ベッリスを連れている。
だが実は王には3年前結婚した妃がいる。
王はその妃の事を完全に忘れていると言う。
忘れられた妃フローラは真相を確かめるべく行動を起こす――
*中世ヨーロッパ風異世界のお話です。
*誤字脱字申し訳ございません。
*この作品をAIに読ませないでください。
夫が我が家へ連れてきた女性は、なぜか私の席に座っていました
大商会の娘レティシアは、経営難に陥っていた子爵家のアルベルトと政略結婚した。
愛から始まった結婚ではない。
それでも数年間を夫婦として過ごし、領地のために実家の商会との橋渡しも続けてきたレティシアは、二人の間には穏やかな信頼くらいはあると思っていた。
そんなある日、アルベルトが一人の若い女性を屋敷へ連れてくる。
「昔馴染みのクラリッサだ。しばらくうちで面倒を見ることにした」
事前の相談は、何もなかった。
そしてその日の夕食。
レティシアが食堂へ入ると、クラリッサはなぜか、この家の女主人である自分の席に座っていた。
慌てて立ち上がろうとするクラリッサ。
それを止めたのは、夫だった。
「僕が座らせたんだ。君ならこれくらい気にしないだろう?」
問題は、一脚の椅子ではなかった。
夫が当然のように決めていたこと。
妻なら受け入れると思われていたこと。
そして、今まで見ないふりをしていたもの。
ひとつの席から始まった違和感は、やがてレティシアに、自分の結婚そのものを見つめ直させていく。
「何も望まない妻で助かる」と夫は笑いました。最後のお願いは、離縁です。
結婚して八年。テレーズは、何も望まない妻だと思われていた。
「何も望まない妻で助かる」
友人たちの前でそう笑った夫に、テレーズも微笑みを返した。
一緒に食事をしたかった夜も、守ってほしかった約束も、確かにあった。
何度も伝えた。何度も待った。
けれど、夫は彼女が何も言わなくなったことを、結婚生活がうまくいっている証拠だと思っていた。
「では、最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」
夫は笑顔で頷いた。
その返事を、テレーズはもう喜べなかった。
『屋敷のものには触れるな』と言われたので、白い結婚の三年間、何にも触れずに屋敷ごと買い取りました
「この屋敷のものには、一切触れるな」
初夜に、夫はそう言いました。白い結婚。夫の愛人は、幼馴染。
私は、頷きました。
「承知しました。一切、触れません」
扉は侍女に開けてもらい、椅子は持参のスツール、台所の匙にも触れない。三年間、本当に何にも触れなかった私は、その間に、夫の借金の証文を、一枚ずつ買い集めていました。
三周年の夜。夫が離縁を告げた、その日。
私は、静かに言いました。
「この屋敷は、いまから私のものです。……屋敷のものには、触れずにお持ち出しください」
旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました
北辺の国境を守る小さな領地、ヴァルドリア。その城館の一室で、若き領主の妻アリシアは、夫レオンハルトの言葉に静かに耳を傾けていた。
「アリシア、君にはもう少し、この城から離れてもらいたい」
レオンハルトの声は、いつものように低く、落ち着いていた。しかし、その言葉の意味は、アリシアにとってあまりにも唐突で、あまりにも冷たいものだった。
「……離れる、とはどういう意味でございますか」
「つまり、この城にいないでほしい、ということだ。しばらくの間、君には別の場所で暮らしてもらいたい」
アリシアは、ゆっくりと目を閉じた。指先がわずかに震えるのを、彼女は必死に抑えていた。この男の前で、自分が動揺している姿を見せたくなかったからだ。
「泣いて縋られても困る」と婚約破棄されたので、仕返しに犬猿の公爵へ求婚したら、恋人役のはずが本気で妬かれました
「君が僕を好きなのは分かっている。でも、泣いて縋られても困る」
別の女性を隣に立たせ、夜会で婚約破棄を告げたフェルナン。
彼は伯爵令嬢レオニーが傷つくことより、自分を追って騒ぎを起こすことを心配していた。
泣くとしても、あなたの前だけはご免だ。
踵を返したレオニーの前にいたのは、顔を合わせれば言い合いになるベルクール公爵だった。
「私と結婚していただけませんか」
思わず口にした求婚を、公爵は笑って受け入れる。
そのまま手を取られ、元婚約者の目の前で踊ることに。
二人きりになって明かした、仕返しのための求婚。
公爵はそれも承知で、三週間後の大夜会まで婚約者を演じると約束した。
手を取るのも、顔を近づけるのも、彼は少しもためらわない。
言い返しても笑って返してくる彼といると、レオニーも言葉を飲まずに笑えた。
ところが、元婚約者を妬かせるために口づけを頼んだ時、公爵は初めて拒む。
恋人のふりなら、あんなに上手だったのに。
どうして、その口づけだけは駄目なのか。
もう一度会いたいと思う理由が、いつの間にか仕返しではなくなっていく。
犬猿の二人が偽の婚約から始める、全6話の恋愛短編。ハッピーエンド。