皇太子が抜けなかった聖剣を、悪役令嬢の末裔の女盗人が抜いた 〜勇者にされるくらいなら、七神器の伝説ごと帝国を盗む〜
男系の正統こそが国を継ぐと信じられてきたレギオン帝国。
神器奉覧祭の日、皇太子アルトリウスは国の宝である聖剣レギオンを抜けなかった。
代わりに聖剣を抜いてしまったのは、祭壇に忍び込んだ貧民街の女盗人――リオ・ヴェイル。
彼女はただ、聖剣のまわりにある宝玉や聖印を盗み、売って、貧民街の仲間を逃がす金にするつもりだった。
だがリオは、かつて帝国史から“悪女”として消された令嬢の末裔だった。
「あの女を、勇者にするな」
帝国は聖剣の奪還と、リオの抹殺を同時に命じる。
勇者になりかけた女盗人は、勇者になることを拒んで逃げ出した。
抜けば勇者にされる。
英雄の運命に絡め取られる。
だからリオは、二度と聖剣を抜かないと決める。
戦うのではなく、盗む。
布告。
名簿。
逃げ道。
検問の段取り。
皇太子の御内意。
国が人を追い詰めるために使う仕組みを片っ端から盗み、国家まるごと出し抜いていく。
一方、聖剣を抜けなかった皇太子アルトリウスはリオを追う。
彼女は帝国の敵だ。
彼女を勇者にすれば、男系の正統で支えられた帝国は揺らぐ。
彼女を殺せば、聖剣と七国結界の柱を失う。
殺さなければならない。
なのに、目が離せない。
王族や貴族の女には何の興味もなかった皇太子は、自分が抜けなかった聖剣を抜いた女に、いつしか心を乱されていく。
首にかかった懸賞金、金貨千。
聖剣ごとなら、三千。
売ってばらして逃げ切るはずだった。
なのに気づけば、毒舌の婆も、腹を空かせた子供も、帝国が捨てた者たちも背負っている。
英雄の称号も、選ばれし運命もいらない。
ほしいのは飯と、薬と、仲間の数だけ揃う逃げ道だ。
そしてやがて、本物の七神器は、国家が捨てた女たちを選び始める。
これは、勇者になりそこねた女盗人が、聖剣も、名前も、正統性も、英雄譚そのものも盗んで、七神器の伝説ごと帝国を盗む物語。
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