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第55話 到着とジュナの噂
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夜明けと共にアダン様の診察を済ませてから私の自室に戻り、着替えて化粧を済ませる。首元にはアダン様がつけた印がまだうっすらと残っているが、服と髪で隠す事は可能である。
「失礼いたします。朝食をお持ちしました」
昨日夕食を運んできたあのメイドが、朝食を運んできてくれた。丸いパン1つと野菜スープの2品だけだが、朝の胃を満たすには十分だ。
「ありがとうございます」
「失礼しました」
パンをコンソメ風味の野菜スープにつけながら食べ、スープも全て飲み干した後は厨房へお皿を返却した。その帰り道に体格の立派な従者と再会し、あと30分程で出発すると告げられた。
「わかりました」
「玄関で集合との事です」
「教えて頂きありがとうございます」
部屋に戻り荷物をトランクにまとめ、支度を全て済ませて玄関に向かった。朝の空は晴れ渡り、雲も少ない。
(爽やかな空だ)
程無くしてアダン様が従者を引き連れて玄関に現れた。
「おはようございます、アダン様」
「おはようジャスミン。今日もよろしく」
馬車に乗り込むと、馬車は勢いよく北西部の街へと向けて進み始めた。時折がたごとと下から突き上げるように揺れが起こる。
「わっ」
一度大きく揺れて、体格の良い従者が頭を天井へと打ってしまった。従者は頭のてっぺんを痛そうに抑える。
「いたた……」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫か?」
「ジャスミンさん、王太子殿下。大丈夫です。よくある事なので」
その後もがたごとと馬車は何度か揺れた。そして昼過ぎに目的地となる北西部の国境近くの町に到着した。
今日はこの町にある砦も兼ねた城に寝泊まりする事になるとアダン様から告げられた。城は山を一部切り崩して建築されており、幾重にも堀が巡り堅牢さが伺える。
馬車は緩やかな坂を駆け上がり、途中のなだらかな場所で停止した。
「ここからは歩いて城に向かう、降りよう」
アダン様からの号令で、私達は荷物を持って馬車から降りて歩いて坂や階段を登る。思ったよりも傾斜が急で、途中で私の息が切れかけそうになる。
「はあっ、ぜえっ……」
「ジャスミン、持とうか?」
「あと少しですよね?」
「うん。もう少しで着くはずだ」
「なら、持ちます」
「気をつけてね」
「はい、お気遣いありがとうございます」
スタミナが切れかけそうな場面で、ようやく城内に繋がるなだらかな道が見えた。そこを歩き玄関に入る。やや薄暗い白壁の玄関には武装した兵士が2.3人程槍をもったまま歩いたりその場に立っていたりする。
「王太子殿下! お疲れ様です」
「皆、警備御苦労様。薬草の調査でしばらくここに滞在する事になる。迷惑をかける事になるがいつも通り警戒にあたって欲しい」
「はっ!」
その後、執事に案内された部屋は、簡素な白壁に茶色いベッドに机と椅子が置かれたやや簡素な部屋だ。だが、部屋自体は広く、絵画が2枚程飾られている。
(どれも天使が描かれている絵だ)
部屋に荷物を置くと、食堂にてアダン様や従者、兵士らと共に昼食の小さなサンドイッチを頬張った。ハムとチーズの塩気が効いていて美味しい。
昼食後、城の裏山へ兵士や従者、アダン様らと共にいよいよ調査に入る。
その時、裏山にて近くの村で暮らしているらしき住民達と遭遇した。
「あら、兵隊さん?」
「あっあれは王太子殿下では?」
住民達はアダン様に気づき、口々に喜びの感情や驚きの声を上げる。
「王太子殿下!」
「王太子殿下だ!」
「皆、元気かい?」
「はい、おかげさまで元気です!」
「北部の修道院周りでは風邪が流行っていると聞いたけどこちらでは流行っていない?」
「はい。こちらは大丈夫です。王太子殿下」
「せっかくだ。色々話を聞かせて欲しい」
アダン様は住民から、この地域についての近況を尋ねて行くようだ。
「ああ、噂ですけど……修道院にヨージス家の令嬢が流刑でやってきたという話は聞きましたわね。確かその令嬢がいなくなったとか」
「え」
ジュナがいなくなった? まさか修道院から脱走したというのか。私とアダン様は互いに口をぽかんと開けて目を合わせてしまう。
「君達、その事について何か知っているか?」
アダン様が兵に尋ねたが、兵は何も知らないと答えるだけだ。だが、1人だけ、うーーんと首を傾げていた兵がいた。
「部下から女が国境を超えたという話は3件程聞きました。ですが、その女がヨージス家の令嬢かはどうかは……」
アダン様曰く自国の民が警備の隙を付き、国境を越えて隣国に入る事は時々ある。大体が生活に困り国境を越えるというパターンが多く、ほとんどが見逃されている状況だ。場合によっては隣国から送還される事もある。
(もしジュナが国境を越えていたら、まずい事になりそうだけど)
「分かった、隣国に聞いてみる」
「かしこまりました」
「住民の皆、修道院はどうなってる?」
「令嬢がいなくなったのに気づいて探したみたいですが見つからないので捜索をそろそろ打ち切って王族に報告するかもしれないという噂は聞きました。あくまで噂ですが」
「失礼いたします。朝食をお持ちしました」
昨日夕食を運んできたあのメイドが、朝食を運んできてくれた。丸いパン1つと野菜スープの2品だけだが、朝の胃を満たすには十分だ。
「ありがとうございます」
「失礼しました」
パンをコンソメ風味の野菜スープにつけながら食べ、スープも全て飲み干した後は厨房へお皿を返却した。その帰り道に体格の立派な従者と再会し、あと30分程で出発すると告げられた。
「わかりました」
「玄関で集合との事です」
「教えて頂きありがとうございます」
部屋に戻り荷物をトランクにまとめ、支度を全て済ませて玄関に向かった。朝の空は晴れ渡り、雲も少ない。
(爽やかな空だ)
程無くしてアダン様が従者を引き連れて玄関に現れた。
「おはようございます、アダン様」
「おはようジャスミン。今日もよろしく」
馬車に乗り込むと、馬車は勢いよく北西部の街へと向けて進み始めた。時折がたごとと下から突き上げるように揺れが起こる。
「わっ」
一度大きく揺れて、体格の良い従者が頭を天井へと打ってしまった。従者は頭のてっぺんを痛そうに抑える。
「いたた……」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫か?」
「ジャスミンさん、王太子殿下。大丈夫です。よくある事なので」
その後もがたごとと馬車は何度か揺れた。そして昼過ぎに目的地となる北西部の国境近くの町に到着した。
今日はこの町にある砦も兼ねた城に寝泊まりする事になるとアダン様から告げられた。城は山を一部切り崩して建築されており、幾重にも堀が巡り堅牢さが伺える。
馬車は緩やかな坂を駆け上がり、途中のなだらかな場所で停止した。
「ここからは歩いて城に向かう、降りよう」
アダン様からの号令で、私達は荷物を持って馬車から降りて歩いて坂や階段を登る。思ったよりも傾斜が急で、途中で私の息が切れかけそうになる。
「はあっ、ぜえっ……」
「ジャスミン、持とうか?」
「あと少しですよね?」
「うん。もう少しで着くはずだ」
「なら、持ちます」
「気をつけてね」
「はい、お気遣いありがとうございます」
スタミナが切れかけそうな場面で、ようやく城内に繋がるなだらかな道が見えた。そこを歩き玄関に入る。やや薄暗い白壁の玄関には武装した兵士が2.3人程槍をもったまま歩いたりその場に立っていたりする。
「王太子殿下! お疲れ様です」
「皆、警備御苦労様。薬草の調査でしばらくここに滞在する事になる。迷惑をかける事になるがいつも通り警戒にあたって欲しい」
「はっ!」
その後、執事に案内された部屋は、簡素な白壁に茶色いベッドに机と椅子が置かれたやや簡素な部屋だ。だが、部屋自体は広く、絵画が2枚程飾られている。
(どれも天使が描かれている絵だ)
部屋に荷物を置くと、食堂にてアダン様や従者、兵士らと共に昼食の小さなサンドイッチを頬張った。ハムとチーズの塩気が効いていて美味しい。
昼食後、城の裏山へ兵士や従者、アダン様らと共にいよいよ調査に入る。
その時、裏山にて近くの村で暮らしているらしき住民達と遭遇した。
「あら、兵隊さん?」
「あっあれは王太子殿下では?」
住民達はアダン様に気づき、口々に喜びの感情や驚きの声を上げる。
「王太子殿下!」
「王太子殿下だ!」
「皆、元気かい?」
「はい、おかげさまで元気です!」
「北部の修道院周りでは風邪が流行っていると聞いたけどこちらでは流行っていない?」
「はい。こちらは大丈夫です。王太子殿下」
「せっかくだ。色々話を聞かせて欲しい」
アダン様は住民から、この地域についての近況を尋ねて行くようだ。
「ああ、噂ですけど……修道院にヨージス家の令嬢が流刑でやってきたという話は聞きましたわね。確かその令嬢がいなくなったとか」
「え」
ジュナがいなくなった? まさか修道院から脱走したというのか。私とアダン様は互いに口をぽかんと開けて目を合わせてしまう。
「君達、その事について何か知っているか?」
アダン様が兵に尋ねたが、兵は何も知らないと答えるだけだ。だが、1人だけ、うーーんと首を傾げていた兵がいた。
「部下から女が国境を超えたという話は3件程聞きました。ですが、その女がヨージス家の令嬢かはどうかは……」
アダン様曰く自国の民が警備の隙を付き、国境を越えて隣国に入る事は時々ある。大体が生活に困り国境を越えるというパターンが多く、ほとんどが見逃されている状況だ。場合によっては隣国から送還される事もある。
(もしジュナが国境を越えていたら、まずい事になりそうだけど)
「分かった、隣国に聞いてみる」
「かしこまりました」
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