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第62話 婚約破棄の為の悪巧み
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悪巧みと言ったアダン様の顔はにたりと笑っていた。まるで悪人が浮かべるような、笑顔に似ている。
「俺が思いついたのは、まずエレーナ姫の身辺調査をする事だ。そこで彼女の異性関係を徹底的に調べる」
「成る程」
「そして何かあればそこをみっちり突き、婚約破棄に持っていくんだ。こんなふしだらな女では婚約相手に値しないとね」
「ですが、何も無ければ?」
「でっちあげる」
「へ?」
「彼女に好みの男を見繕って送り、既成事実を作るか、そうなるように誘導するんだ」
そう語るアダン様はこれまで見てきた中で一番悪人の如き雰囲気と覚悟を醸し出していた。
「アダン様、なぜそこまで……」
「君が好きで、君以外とは結ばれる気は無いからだ。君を悲しませるような事はしたくはない」
「あ、アダン様……」
アダン様は安楽椅子から立ち上がり、クローゼットの扉を開いてその中にある古びた箱を開けた。その中にはある物が入っていた。
「その、ハンカチーフ……」
「あの時、ジャスミンに助けてもらったのが俺だ。あの時から俺はジャスミンを好きだった。これ、返すよ」
私はアダン様から、ハンカチーフを受け取る。そうだ、ユングミル城で傷の手当をしたあの少年は、アダン様だった。
(あの時はあれだけ泣いていたのに、今はそんな弱々しさは一切ない)
「ジャスミン、どうした?」
「いや、アダン様はあれから随分逞しくなったなと」
「泣いていたの覚えてたんだ」
「はい、勿論」
「勿論?! なんか恥ずかしくなってきたな……」
昔話に花を咲かせた後は、悪巧みに戻る。
「とにかく。俺が他の女とも関係を持っているという事実だけでは、側室も作れ。の声だけで終わってしまう。必ずエレーナ姫が他の男と関係を持っている。という部分が必要だ」
「そうですね……」
「スパイだけでは時間もかかる。だから、俺は直々に隣国に向かい、話を聞こうと思う。ジャスミンもついてきてくれないか?」
「はい、勿論同行致します」
「分かった。そこで情報を集めて証拠が揃えばすぐに婚約破棄する」
「了解致しました」
「証拠が無ければ一旦こちらに戻り、エレーナ姫が好みそうな男を貴族か宮廷辺りから数人見繕って、隣国に送る。そして彼らにはエレーナ姫を誘惑して貰い、事実を作る。その事実を攻めて婚約破棄に持ち込む。これで行こう」
「はいっ」
計画が決まった。私は部屋から退出する際に再度アダン様の目をじっと見た。アダン様は優しく微笑んでくれた。
(よし)
初めての悪巧みと計画。どこか胸を弾ませている自分が頭と胸、両方の中にいる。
「俺が思いついたのは、まずエレーナ姫の身辺調査をする事だ。そこで彼女の異性関係を徹底的に調べる」
「成る程」
「そして何かあればそこをみっちり突き、婚約破棄に持っていくんだ。こんなふしだらな女では婚約相手に値しないとね」
「ですが、何も無ければ?」
「でっちあげる」
「へ?」
「彼女に好みの男を見繕って送り、既成事実を作るか、そうなるように誘導するんだ」
そう語るアダン様はこれまで見てきた中で一番悪人の如き雰囲気と覚悟を醸し出していた。
「アダン様、なぜそこまで……」
「君が好きで、君以外とは結ばれる気は無いからだ。君を悲しませるような事はしたくはない」
「あ、アダン様……」
アダン様は安楽椅子から立ち上がり、クローゼットの扉を開いてその中にある古びた箱を開けた。その中にはある物が入っていた。
「その、ハンカチーフ……」
「あの時、ジャスミンに助けてもらったのが俺だ。あの時から俺はジャスミンを好きだった。これ、返すよ」
私はアダン様から、ハンカチーフを受け取る。そうだ、ユングミル城で傷の手当をしたあの少年は、アダン様だった。
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「ジャスミン、どうした?」
「いや、アダン様はあれから随分逞しくなったなと」
「泣いていたの覚えてたんだ」
「はい、勿論」
「勿論?! なんか恥ずかしくなってきたな……」
昔話に花を咲かせた後は、悪巧みに戻る。
「とにかく。俺が他の女とも関係を持っているという事実だけでは、側室も作れ。の声だけで終わってしまう。必ずエレーナ姫が他の男と関係を持っている。という部分が必要だ」
「そうですね……」
「スパイだけでは時間もかかる。だから、俺は直々に隣国に向かい、話を聞こうと思う。ジャスミンもついてきてくれないか?」
「はい、勿論同行致します」
「分かった。そこで情報を集めて証拠が揃えばすぐに婚約破棄する」
「了解致しました」
「証拠が無ければ一旦こちらに戻り、エレーナ姫が好みそうな男を貴族か宮廷辺りから数人見繕って、隣国に送る。そして彼らにはエレーナ姫を誘惑して貰い、事実を作る。その事実を攻めて婚約破棄に持ち込む。これで行こう」
「はいっ」
計画が決まった。私は部屋から退出する際に再度アダン様の目をじっと見た。アダン様は優しく微笑んでくれた。
(よし)
初めての悪巧みと計画。どこか胸を弾ませている自分が頭と胸、両方の中にいる。
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