祈りのかたち~若き仏師と僧侶が紡ぐ、静かな再生の物語

春の京都。ある古刹で若き僧侶と、無名の仏師が出会う――。

奈良出身の仏師・岡野慶彦は、かつて恋人を亡くし、仏像を彫ることで“祈りとは何か”を問い続けている。一方、真言宗の古刹・蓮照寺の副住職である渡辺智章もまた、最愛の母を喪って以来、形だけの祈りに迷いを抱えていた。

ある日、過去に彫った聖観音像に惹かれた住職の依頼で、慶彦は寺の本尊として新たに千手観音像を彫ることに。
ふたりは仏と向き合う日々のなかで、言葉にしきれない痛みや静かな再生の感情を、少しずつ共有していく。

彫りかけの像。まだ輪郭を持たない祈り。誰でもなく、誰かのために在る空白。
木と仏、沈黙と呼吸をめぐる一年の対話のなかで、彼らの心はそっと重なりはじめる。

名前を持たぬ像が生まれるとき、そこには確かに“生きるかたち”が宿っていた。

静けさの奥に息づく、仏師と僧侶の物語。
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