DON'T CHILL THE BANANA(バナナを冷蔵庫に入れるな!)
人間の皆様へ。
バナナの取り扱いについて、ひとつ苦情がある。僕たちを冷蔵庫へ入れるのはやめていただきたい。
長持ちさせたいという気持ちは分かる。しかし、善意であれば何をしてもよいわけではない。僕たちの皮は寒さに弱く、冷やされると黒くなる。親切にも、向き不向きというものがあるのだ。
◆
僕はバナナである。
名前はない。あるのは「高地栽培フィリピン産」という出自と、「朝のエネルギー補給に最適!」という他者からの期待だけだ。
考えてみれば人間も似たようなものかもしれない。出身地と肩書きで呼ばれ、額に貼られたシールどおりに生きることを求められる。
僕を買ったのは、バナナひとつ選ぶのに何往復もする男だった。
仲間は四本。存在の不安を陽気さで踏み倒すマイケル、どちらが兄かという問いに取り憑かれた双子、そして沈黙のなかで何かに到達しかけている無口な一本。僕たちは一本ずつ自分の結末を迎えていくのだが、本当の問題は僕たちの行く先ではなく、この男が何も選べないことのほうにあった。
バナナの取り扱いについて、ひとつ苦情がある。僕たちを冷蔵庫へ入れるのはやめていただきたい。
長持ちさせたいという気持ちは分かる。しかし、善意であれば何をしてもよいわけではない。僕たちの皮は寒さに弱く、冷やされると黒くなる。親切にも、向き不向きというものがあるのだ。
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