夫婦元結岩咲花(めおともとゆい いわにさくはな)~もう一つの四谷怪談~
日本「最怖」の怪談話として、知らない人はいない鶴屋南北の「東海道四谷怪談」
文政八(1825)年、江戸中村座で初演されて以来、歌舞伎だけではなく、映画等で数え切れないくらいリメイクされた日本を代表する怪談です。
愛する夫・伊右衛門に騙され、毒を盛られ、非業の死を遂げた女性お岩さんの怨霊が伊右衛門や、彼に協力した者達を取り殺す!
この世で最も恐ろしいのは、欧米ホラーのような殺人鬼などではなく「人の念」・・・特に「怨念」である。
世界的にも人気の高い「Jホラー」の古典にして最高傑作・・・そう言い切って良いでしょう。
しかし、この四谷怪談には全く別の話があるというのです。
明治から昭和初期にかけて活躍した小説家、岡本綺堂(1872~1939)氏の短いエッセイ「四谷怪談異説」によると、伊右衛門とお岩さんは仲睦まじい夫婦で、お岩さんは貧困のためにやむを得ず夫婦別々に暮らしていた二人が再び元のように一緒に暮らせることを願って、奉公先のお稲荷様に毎日祈願していた貞女だというのです。
朝、皆が寝静まっている早朝に屋敷の庭先の稲荷に熱心に祈願しているお岩さんの姿を屋敷の主人が目撃し、彼女から事情を聞き、二人が一緒に暮らせるよう力添えをしてくれたため、伊右衛門・お岩夫婦は再び一緒に暮らせるようになったというハッピーエンドストーリー。
現存する「於岩稲荷」は、お岩さんが夫婦が再び一緒に暮らせることを願って祈願していた祠だと言います。
・・・恐ろしい怪談話とは真逆の物語です。
本作は、そんな「もう一つの四谷怪談」を短編にしてみました。
タイトルの「夫婦元結岩咲花」は昔の歌舞伎・浄瑠璃の演目風に「めおともとゆい いわにさくはな」と読みます。
「元結」(もとゆい)は男女問わず髪を結う時に使う紐・糸のことで、伊右衛門・お岩夫婦が再び「元」に「結ばれる」とかけています。
なお、「半七捕物帳」で日本の「捕物小説」の祖となった岡本綺堂氏のエッセイ「四谷怪談異説」は、著作権が消滅しているため、青空文庫等で気軽に読むことが出来ますので併せてお読み頂けると幸いです。
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