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240.アルフレッドの検証(人魚姫の想い)✔

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 人魚達とシーサーペントについて、どのように倒すかを話し合う事になった。

 やっぱり、こっちが本命だったみたいだな。ミトとミルトも協議に参加しているが、発言することはなかった。

 人魚の姫様だが、危ないから外に出るなと言われていたのだそうだ。ところが勝手に抜け出して運悪くシーサーペントに遭遇したと王様から説明を受けた。

 かなり叱られたみたいでシュンとしている。だからあの時の元気がなかったのだろう。

 外に出たい気持ちは分かる。こんな穴の中にずっと隠れて過ごすなんて考えただけでぞっとする。

 姫が近くに泳いできた。もじもじとしていて先日と同じ人魚とは思えない。

「迷惑かけてごめんなさい。シーサーペントを倒して欲しいの! 倒してくれるならなんでもするから!」

 じっと俺を見つめてくる。

 本当に運悪くなのだろうか? 姫様の態度が気になる。

「もしかして、自分をおとりにシーサーペントを倒してもらうために連れて来たの?」

「……本当にごめんなさい!」

 迷惑な話だが、姫様は自分をおとりにして他人を巻きこんででも倒してもらいたかったのだろう。失敗すれば死んじゃうのに。それほど切羽詰まっているんだろうな。残った子供が二人と言っていたからな。兄弟姉妹が食べられちゃったんだろう。

 この洞窟の入り口を発見されたら人魚は絶滅が確定するらしい。洞窟が大きいからシーサーペントも入って来れるかもしれないし、待ち伏せされれば……詰むな。

 すぐにでも討伐する必要があることがよく分かった。他人を巻き込むのは良くないが、姫様なりに考えた行動だったみたいだ。想いは分からないでもない。

「二度としないでね! 倒せると約束はできないけど、やってみるよ!」

 姫様の表情が明るくなった。

「アルフレッドなら、きっとなんとかしてくれると思っていたわ! あなた、海の精霊に好かれているもの!」

 姫様の表情がコロコロと変わり、急に元気になった。

 王様に迷惑かけるなと呼び戻されるまで、俺の事を根掘り葉掘りと聞いていた。人間が海の精霊と仲がいいことがよほど不思議なのだろう。

 大きなシーサーペントは普通の個体ではないと、王様が言っていた。他のシーサーペントなら撃退できるが、あいつだけ銛が全く刺さらなかったそうだ。

 海中でも銛は刺さらないことは分かった。どのように銛で刺すのか聞いてみたところ、泳いで勢いをつけてギリギリで投擲するそうだ。

 銛の先を確認してみたが鋭く研ぎ澄まされている。人魚の泳ぐ姿も見せてもらったが、結構早い。このスピードで銛をぶつけても刺さらないという事は水の防御魔法だけではないのかもしれない。あのテカテカと光る鱗が硬い上にツルツルと滑るのだろう。

 どちらにしても俺は、海中では息ができないし早く移動もできない。海中では勝ち目はほぼないだろう。

 海面に出てきてもらわないと勝負にもならない。体の表面は水の魔法で覆われていて、銛が当たる瞬間に押し流され勢いが殺されてしまう。

 やはり水の保護がない顔か口の中しか、攻撃できる場所はなさそうだな。シーサーペントの水流弾をなんとかできなければ遠距離攻撃は無効化されることは分かっている。

 水竜の時のようなヤギでも船に乗っけるかな。生きていなくていいならお肉や魚などをエサにしてもいいかもしれない。

 人魚達に聞いたところ、死んでしまった魚や肉を与えてみたことがないので分からないそうだ。

 襲われるとき、人魚は生きているし、シーサーペントにエサをやろうとするなんておかしい奴だと思われそうだな。

 十年以上前の島の南側は、大きな魚の獲れる優良な漁場だったそうだ。しかし、シーサーペントが住み着くと船が襲われるようになったそうだ。それでも大きな船で漁に出れば、まだなんとか襲われずに漁ができていた。しかし、数年前からは大きな船でさえ襲われるようになったそうで、今では島の南側に漁に出る漁師はいないそうだ。
 
 船で島の南側に出ることは自殺行為らしい。島の漁師たちは恐れて船は出さないと言っていた。そうだろうな。この港に停泊している船の中で、白い帆船は大型になるが、これに襲い掛かるのだから、これより小さな漁船などひとたまりもないだろう。

 と、いう事で実験をしてみよう。ボートが沈まない程度に魚を満載して、ロープで南側の海まで引っ張っていくことにした。船では無理だから空を飛んで引っ張る。ロープの長さは五十メートル。水流弾だけ気をつければ、あのでかいシーサーペントでも届かないだろう。

 やつではないがシーサーペントがボートに近づいてきた。首を海面から出してボートを覗き込んだが、食いつかない。生餌しか食べないのだろうか? 少しボートを流して着陸して陸地から観察を続けてみたが、何度か首を出しては海に戻っていた。魚はダメなのか生餌でなければ興味を示さないのかよくわからないな。

 一度、港に戻ろう。ボート迄飛んで行くとロープを手繰り寄せる。魚は傷んでいるようなので海に投げ込むことにした。

 ボートに降りて魚を投げ込んでいたら、突然、シーサーペントが襲ってきた。小さなやつでよかった。直ぐに上空に飛び上がり何とか逃げ切った。危ない。噛みつかれて海に引き込まれれば溺れてしまうところだった。

 南側の海で、それも小さなボートの上で作業するのは危険だったな。危うく死ぬところだった。ちょっと反省している。

 生餌なら襲ってくることは確認できた。生きているかどうかは、振動か何かで判断しているのだろう。

 さっき魚を投げ込んだせいで、海が大変なことになっている。死んだ魚を食べに他の大きな魚? サメとかかもしれないが集まって来た。これにシーサーペントが襲い掛かっている。

 更にその血を嗅ぎつけたのかサメのような魚が集まり、シーサーペントが襲っている。

 シーサーペントの数が増えてきた。今手持ちの武器は棒手裏剣十本と爆裂弾五個。

 高高度まで上昇して急降下からの棒手裏剣を射出する。急降下からの急上昇、刺さったかな?

 何匹かのシーサーペントに当たったみたいだ。動きのおかしくなったシーサーペントが他のシーサーペントに襲われ始めた。シーサーペントは仲間でも弱ったら、襲って食べるみたいだな。

 大きさが違い過ぎるが、普通のシーサーペントなら棒手裏剣が刺さることが確認できた。

 後は死んだ肉でも襲うのかだが、やはり生餌に反応しているように見える。シーサーペントがサメを襲った際に、エサを積んでいたボートが沈んでしまった。一度、港に戻ろう。

 二隻目のボートに肉を購入し、島の南側までロープで引っ張って飛行している。

 今度は不用意にボートに降りたりはしない。近くの岸壁に着陸して観察する。

 動きがないな。先程のサメ騒ぎでシーサーペントのお腹が満たされたのだろうか?

 顔を出してくれないと肉の検証ができない。ボートを回収に向かおう。上空に飛び上がる。

 ドーン、遠くで何かがぶつかる音が聞こえた。
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