婚約破棄されたので、私が立て直した商会からは手を引かせていただきます
「君は帳簿をつけていただけだろう?」
婚約者ダリウスの実家が営むグランベル商会を、五年間支え続けてきた侯爵令嬢レティシア。
赤字だった商会の資金繰りを立て直し、仕入れ先との関係を築き、新商品の販路まで開拓したのは彼女だった。
ところが創立記念夜会で、ダリウスは華やかな伯爵令嬢ヴィオラを傍らに置き、一方的に婚約破棄を宣言する。
理由は――「商会のことばかり考えている君より、ヴィオラの方が妻に相応しい」。
レティシアは静かに頷いた。
「承知しました。では、私が担当していた商会のお仕事も、本日をもってすべてお返しいたします」
翌朝から、更新されない仕入れ契約、止まる融資審査、崩れる資金繰り。
そこで初めてダリウスたちは知る。
帳簿をつけていただけの女など、最初からどこにもいなかったのだと。
一方、自由になったレティシアのもとには、以前からその才能を評価していたレグナード公爵ノアから、新しい商会の経営を任せたいという誘いが届いて――。
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