冥婚
1925年、桜の散る夜に生まれた少女・登志子は、三歳で流行病に倒れた。
樋口家は幼くして亡くなった魂が荒ぶることを恐れ、手毬、髪飾り、ランドセル、化粧道具、振袖――
生きていれば迎えるはずだった節目の品々を、毎年供え続けた。
やがて二十歳を迎える年、家は“冥婚”を決意する。
相手は、戦地ルソンで戦死と報せられた青年・中島礼治。
静かに執り行われた冥婚ののち、奇跡のように礼治は生還する。
彼は言う――
「夢の中で、登志子という女と結婚した」
帰宅した礼治を待っていたのは、
振袖をまとい、鏡の前で髪を梳く“花嫁”だった。
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