溺愛公爵のキュートアグレッション
献身的に尽くす妻・メリッサの悩みは、結婚半年でも夫のシュタルクが夜の営みを拒むこと。
「君を汚したくない」と拒まれるたび、彼女は自信を失っていく。
だが夫の本音は真逆
愛しすぎる妻を前に「噛みつきたいし泣かせたくて仕方ない」というキュートアグレッションを、必死の理性で抑えていた。
限界寸前の男と愛されたい女
すれ違う二人の独占欲が、ある夜をきっかけに決壊する──
『溺愛公爵のキュートアグレッション』は、夫から求められていないと思い込んでいた妻が、実際には愛されすぎていたのだと知る反転を、恋愛上の快感へ結び付けた作品である。冷淡に見える公爵と、傷つきながらも関係を諦めずに歩み寄るメリッサの組み合わせが分かりやすく、手料理や告白といった場面も、二人の距離を縮めるために素直に機能している。
特に優れているのは、シュタルクの拒絶を単なる冷たさとして終わらせず、「触れれば自分を抑えられない」という愛情の裏返しへ変えている点である。同じ行動の意味が後から反転するため、前半のすれ違いが無駄にならず、真相が明かされた時に恋愛作品として明確な満足感が生まれている。タイトルに掲げられたキュートアグレッションも、人物の性質、夫婦の誤解、結ばれた後の愛情表現へ繋がっており、作品の中心が読者へ伝わりやすい。
文章も、メリッサの不安や期待へ視点を寄せ、手の強張り、心拍、視線、接触への反応などを通して感情を身体へ落とし込もうとしている。感情の動きが追いやすく、誰が何をしているのかで読者を迷わせないため、二人の関係へ集中して読むことができる。複雑な事件を増やさず、閉じた空間の中で夫婦の欲望と誤解を扱う方向も、本作の濃密さに合っている。
今後さらに伸ばせるのは、この反転の力を告白の一場面だけで終わらせず、日常の行動へ広げることである。目を逸らす、触れた手を急に離す、人前では必要以上に距離を取るといった行動が、後からすべて抑え込んだ愛情だったと分かれば、作品全体に反転の快感が残る。また、キュートアグレッションから生じる衝動ごとに異なる反応や関係変化を描ければ、現在の魅力を損なわず、二人の新婚生活をより豊かに発展させられる作品である。
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