ある日愛犬が人間になった

ある日、二歳くらいの子犬が段ボールに入れられて捨てられていた。

震えていたその子を、僕は放っておけなかった。

「……今日から、お前はダンな」

オスだったから、単純に“ダン”。

名前を呼ぶと、嬉しそうに尻尾を振った。

それだけで、もう家族になった気がした。



ある日の散歩中。

夕暮れの河川敷。

作業着姿の、かっぷくのいい男が前を歩いていた。

肩に大きな袋を担いでいる。

その男が、ガサッと何かを落とした。

だが気づかず、そのまま歩き去る。

ダンが急に引っ張った。

「ちょ、ダン?」

落ちていたのは、ドッグフードの袋。

破れかけたラベルに、うっすらと文字が見える。

――犬人……のドッグ……

「……犬人?」

よく見えない。

でもドッグフードなら問題ないだろうと、その時は気にしなかった。

ダンは夢中で袋に噛みつき、ビリッと破って中身を食べ始めた。

「こら、ダン! 行儀悪いぞ」

止める間もなく、ほとんど食べてしまった。

その夜。

ダンはやけに静かだった。

いつもなら僕の足元で丸くなるのに、今日はじっと僕を見ている。

その瞳が――

いつもより、妙に“理解している目”に見えた。
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