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第三章
逃亡者は増え続ける 1
しおりを挟む「何だと!?あの伯爵家全員が逃げ出した!?」
私───レナードが自室で貿易に関する書類と謝罪の手紙を書いているとき、衛兵の一人がノックもなしに入り込みこう言った。
『コールソン伯爵家全員が国外へ逃亡しました!』
あの化け狸は私に貢物を用意したいと嘘をついて、領地に戻り荷物をまとめて出ていった。
ノックもなしに入ってきた衛兵に対する怒りなど何処かへ行き、今はもう騙された屈辱と怒りで顔を真っ赤にする。
頭にカッと血が上り、怒りで血管がはち切れそうだ。
あの化け狸....!私を馬鹿にしおって!
大体、可笑しいと思ったのだ!口を開けば、平民の扱いがどうのこうのと抗議してきた奴がいきなり私を褒め称えてくるなど!
私が国王であることに不満を持っていた貴族の中でも特にあの化け狸は私を嫌っていた。あやつの口から溢れる言葉は薄っぺらく、偽りなのか真なのか分かったものじゃない!
そんな奴の言葉を信じた私が馬鹿だった!
「今すぐ兵を向かわせろ!生け捕りが好ましいが、この際だから殺しても構わん!」
「で、ですが....!それでは我が国の守りがより手薄に....」
「うるさいっ!お前達は私の言うことを聞いていれば良いのだ!今すぐ兵を出せ!良いか!?今すぐ、だ!」
「っ....!分かりました」
我が国の守りが手薄になる?そんなことは分かっている!
だが、この屈辱を受けて黙っていられるほど私は大人ではない!!
現在のフェガロフォス国の守りは非常に脆い。外敵から国を守るための結界はどこの国でもやっているが、我が国は今までその結界をサラマンダーやルーナ嬢がやってくれていたので二人とも居ない今、我が国全体に結界を施せる者は居ない。
本来であれば、国全体を包み込むほどの結界魔法は魔導師数十人が交代交代で行うもの。一人でやれるようなものではないのだ。
ルーナ嬢や平民も去った今、フェガロフォス国内で結界魔法を扱える者は少ない。居るには居るのだが、たった数人で国全体を包み込むほどの結界が貼れる筈もない。
だから、結界魔法に頼れない今、人自ら国を外敵から守らなければならないのだ。そのためには門番だけではなく、国の外を監視する監視役も必要で....。
監視役として兵士を何十人か回す必要があり、王宮の警備も手薄だ。どこもかしこも人手不足の状態。
そんな状況であの化け狸どもを探すための捜索隊を結成すれば、必ずどこかの警備に手が回らなくなる。今ですら最低限の警備しか行えていないのにその最低限の警備すら行えない状況になるかもしれない。
分かっている....そんなことは分かっている!だが.....あの化け狸どもに一矢報いらなければ気が済まない!
応援ありがとうございます!
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