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義妹との生活

色々気づかされる

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 その後買い物をして、定食屋さんでお昼を食べることにする。

 和食がメインの店で、色々な種類があるしリーズナブルな価格設定だ。

「詩織、何が良い?」

「うーんとねー……ちゅるちゅる!」

「あん?」

「お兄ちゃん、多分うどんだと思う」

「なるほど、ちゅるちゅるか。一人で食いきれないよな?」

「いつもは、お母さんと半分個してて……」

「春香は意外と食べるしな」

「も、もう! お兄ちゃんのばかぁぁ……」

「何故だ? 俺は褒めているのに」

「そ、そうなの?」

「ああ、今のうちから食べておかないと身体が出来上がらないからな。それに、俺は……」

「お兄ちゃん?」

「昔から、お前が俺の料理を美味しそうに食べるのを見るのが好きだった」

 俺は……何を今更照れている?
 ……いや、そうか。
 今思えば、料理が好きになったきっかけがそれだったのかもしれない。
 春香が喜ぶ顔が、桜さんと兄貴が喜ぶ顔が見たかったから……。

「そ、そうなんだ……えへへ。じゃあ、大盛りにしちゃおっかな!」

「じゃあ、俺もそうするか。んで、詩織に分けてやろう」

 俺は照れ臭さを隠すように、軽い口調で言う。

「おじたん!」

 隣に座っている詩織が、俺の服の端っこを引っ張る。

「うん?」

「サクサクするやつ食べたいお!」

「天ぷらだな。うどんと天ぷらだ」

「うどんとてんぷら!」

「そうだ、覚えておくと良い。しっかりと言葉遣いを覚えて、パパとママを驚かせてやろうな?」

「あいっ!」




 その後、無事に食事を済ませると……。

「うぅー……」

「詩織、寝ちゃダメだよ。帰るまで我慢してね」

「あ、あい」

「よし、春香」

「なに?」

「財布を預けるから、会計を済ませてくれるか? 俺は詩織を車に乗せて、店の前まで持ってくる」

「わ、わかった」

「おい……? まさか、会計まで緊張するのか?」

「し、しないもん! ……ごめんなさい、少しします」

「そうか……いや、謝ることはない」

 この歳でもと思うが、人それぞれだからな。

「でもやるから」

「おう、頑張れよ」

「うん!」

 笑顔でそう言い、会計に向かう。

 ……これは、早めにやった方が良いかもな。




 その後安全運転を心がけながらも、出来るだけ急いで帰宅して……。

「むにゃ……」

「よし、何とか間に合ったか」

「ほっ、良かったぁ」

 車で寝ることなく、何とか布団で寝かせることに成功する。




 詩織が寝たのを確認し、俺は春香に問いかける。

「春香、少しいいか?」

「う、うん?」

 戸惑う春香を連れ、リビングのソファーに座る。

「さて、春香」

「なに、お兄ちゃん?」

「早速だが……明日からバイトしてみるか?」

「ふえっ!?」

「ああ言っておくが……もちろん、研修だ。時給は出すが、仕事をするわけじゃない。流れを見たり、どういったことをするのかを確認するためにだ」

「い、いきなりすぎないかな?」

「さっきの会計云々でも思ったが、早い方が良いだろう。学校での人見知りを直したいんだろ?」

「う、うん……でも、詩織をどうしよう?」

 本当に妹思いな奴だな。
 買い物中に何か買いたい物があるかって聞いたら、詩織の絵本と答えやがった。
 全く……本当に、良いお姉さんだこと。

「それなんだよなぁー。流石に、店の中に置いておくわけにはいかないし」

 流石に職権濫用すぎる気がするし……。
 もちろん、従業員のみんなは快く受け入れてくれるが……。
 来てくれるお客さんのに中には、それをよく思わない人もいるだろう。

「そうだよね……こんな時ね、いつも思うんだ」

「ん?」

「お父さんとお母さんには、言えないけど……おばあちゃんとか、おじいちゃんとかいたらなって……」

「春香……」

 そうだよな……普通だったら、こういう時に俺に預けるのではなく……。
 血の繋がった祖父母の家に預けるものだもんな。

「ご、ごめんね! お兄ちゃんが嫌とかじゃなくて! それは嬉しくて! ええと……お兄ちゃんだって、おじいちゃんおばあちゃんいないのに……」

「いや、良いさ。気持ちはわかる。というか、痛いほどわかる。俺も両親が死んだ時に、祖父母がいればなと……そうすれば、兄貴や桜さん達に迷惑をかけることもなく」

「それは違うもん!」

 春香がその小さい手で、俺の手を握ってくる。

「春香?」

「お、お父さんとお母さんは、お兄ちゃんを迷惑だなんて思わないもん……!」

 少し泣きそうになりながら、必死に訴えてくる。

「……そうだな。うん、わかってる」

「お、お兄ちゃんは、私たちがいると迷惑……?」

「そんなわけがない」

  もちろん、大変なことは沢山あるが……それ以上ものを貰っている気がする。
 だからなのか……それだけは、すんなりと言葉が出てきた。

「えへへ……だから、お父さんもお母さんもそうだと思うんだ」

「そうか……そうかもしれないな」

 兄貴と桜さんは、こんな気持ちだったのかな?

 俺は結局、一度も聞けたことはない……。

 俺を引き取って後悔しなかったのかと……。





 その後、俺は店に向かう。

 仕込みはしないが、在庫確認をしたり……。

 冷蔵庫の中を整理したり、扉や窓を開けて空気の入れ替えなんかをする。

「おや? 宗馬君?」

 この声は……。

「亮司さん?」

 開いたドアから、亮司さんがひょっこりと顔を出している。

「すみません、邪魔をしてしまいましたね。暇なので散歩をしていたのですが……」

「いえ、平気ですよ。ただの空気の入れ替えと、確認作業ですから」

「それは大事なことですね。一日人が入らないだけで、随分と違いますから」

「ええ、そうなんですよ……そうだ、良かったら俺の家でお茶でもどうですか?」

「えっ?」

「少し、相談に乗って頂きたいことがありまして……」

「ふむ、何ですかな?」

「税金関係のことと、妹を明日からバイトさせようと思ってまして……」

「なるほど、税金関係なら力になれそうですね。妹さんですか? 許可を取ったのではないですか?」

「ええ、皆からとりました。ですが、その際に下の妹をどうするのかと思っていて……」

「ふむ、一人にするのは可哀想ですね……。力になれるかはわからないですが、私で良ければ相談に乗りましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ、私もお世話になってますから」

 良かった、心強い相談相手が見つかった。

 この方なら、何か良いアイデアを思いついてくれるかもしれない。

 ……と、この時の俺は気楽に考えていた。

 ……まさか、あんなことになるとは。
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