止まった夏の秒針
夏休み最後の日、高校三年生の水瀬陸は恋人の七海を海に連れて行こうと半年かけて準備してきた。バイト代を貯めてバイクを買い、免許を取り、今日こそペアリングを渡して「いつか結婚しよう」と伝えるつもりだった。一年半前、図書館で『ノルウェイの森』を同時に手に取ったことで始まった二人の関係は、水族館、映画館、クリスマス、花見、誕生日と重ねてきた思い出に彩られていた。しかし高速道路で対向車のトラックと衝突し、0.03秒という引き延ばされた時間の中で二人は叶わなかった未来を語り合い、手を繋いで衝撃を迎えた。
三日後、七海は病院で目を覚ます。しかし驚くべき事実が明らかになる。ドライブレコーダーの映像には、バイクを一人で運転する七海の姿しか映っていなかった。陸くんは存在しなかった。図書館の防犯カメラにも、一人で誰もいない空席に向かって話しかける七海の姿が残っていた。精神科医の田中医師から、七海は一年半前から統合失調症と診断されて通院していたことを告げられる。陸は幻覚だったのだ。
さらに衝撃的な真実が明らかになる。封筒から取り出した出生届には、水瀬陸と水瀬七海、二人の名前が並んでいた。陸は七海の双子の兄だったのだ。しかも十年前、七歳のとき、七海が道路に飛び出したのを庇って交通事故で亡くなっていた。辛すぎる記憶を封印した七海の脳は、兄の存在を完全に消去し、やがて幻覚として呼び戻し、さらに恋人として作り変えていたのだった。
病院の屋上で、七海は最後の幻覚として現れた陸に別れを告げる。陸は「いつか本当の恋をしてほしい」と言い残し、星空に溶けるように消えていった。
退院後、七海は写真立ての中で笑う七歳の陸と自分の姿を見つめ、お墓参りで前を向くことを誓い、事故があった公園で最後のお別れを言う。そして一歩ずつ現実を生き始める。
一年後の春、七海は大学の文学部に入学していた。美波という友人ができ、幻覚は完全に消えていた。ある夜、レポートを書き終えた七海は窓を開けて星空を見上げる。「お兄ちゃん、ちゃんと生きてるよ」と呟くと、小さな風がカーテンを揺らした。七海はそっと微笑んで、窓を閉じた。
三日後、七海は病院で目を覚ます。しかし驚くべき事実が明らかになる。ドライブレコーダーの映像には、バイクを一人で運転する七海の姿しか映っていなかった。陸くんは存在しなかった。図書館の防犯カメラにも、一人で誰もいない空席に向かって話しかける七海の姿が残っていた。精神科医の田中医師から、七海は一年半前から統合失調症と診断されて通院していたことを告げられる。陸は幻覚だったのだ。
さらに衝撃的な真実が明らかになる。封筒から取り出した出生届には、水瀬陸と水瀬七海、二人の名前が並んでいた。陸は七海の双子の兄だったのだ。しかも十年前、七歳のとき、七海が道路に飛び出したのを庇って交通事故で亡くなっていた。辛すぎる記憶を封印した七海の脳は、兄の存在を完全に消去し、やがて幻覚として呼び戻し、さらに恋人として作り変えていたのだった。
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