嫌われ者のネクロマンサー

ヴァルディウス王国。そこは、かつて栄華を誇りながらも、今や目に見えぬ瘴気に蝕まれつつある国だった。

その国へと戻る運命を背負ったひとりの魔女がいた。

白の魔女、セレナ。

彼女は人を救う力を持ちながら、「死」を覆すことだけは決してしなかった。祈りも感謝も受け取らず、ただ「生きたい」と願う者にのみ手を差し伸べる。その在り方ゆえに、人々から神と崇められ、必要とされる存在だった。

しかし、その信条は、ある夜を境に崩れ去る。

王が愛する王妃の死を受け入れられず、自らの命と引き換えに蘇生を願ったとき。
セレナは初めて、死者蘇生を行ったのだ。それは紛うことなき、禁忌だった。

死者の名を呼ぶことは、境界を越えること。
世界の理に背き、決して戻してはならないものに触れること。

その名は『アメリア』

この選択が、やがてセレナ自身を世界から切り離すことになるとは、その時の彼女はまだ知らなかった。


やがて時は流れ。

セレナはバリスハリス王国へと流れ着き、そこで若き王レオニスと出会う。

彼は王としての責務を背負いながらも、どこか不器用で、だが誰よりも真っ直ぐに大切な人を守ることができる男だった。禁忌の魔女と呼ばれるセレナに対しても、恐れではなく、一人の人間として向き合う。

二人は惹かれ合う。

それは言葉ではなく、行動で示される想いだった。

同時に、運命は静かに牙を剥く。

「私のせいで、誰かが死ぬのは嫌なんです」

そう語る彼女に対し、レオニスは手を差し出す。

「お前は俺の隣でいい。それだけで、全部守ってみせる」

それは王としてではなく、一人の男としての約束だった。

しかしその約束は、あまりにも過酷な戦いの中で試される。

王と白の魔女の運命が断絶した世界で、
それでも彼は、彼女に恋をする。

たとえ、その存在が世界から消えても。

これは、禁忌に触れた魔女と、バリスハリスの王の、終わりから始まったロマンスファンタジー。


24h.ポイント 0pt
0
小説 222,650 位 / 222,650件 ファンタジー 51,740 位 / 51,740件

あなたにおすすめの小説

選ばれなかったのは、どちら?

白瀬しおん
恋愛
「あなた、本当にうちの家にふさわしいと思っているの?」 その一言で、すべては終わるはずだった。 婚約者は沈黙し、公爵夫人は微笑む。 わたくしはただ、静かに席を立った。 ――それで、終わりのはずだったのに。 届いた一通の封書。 王城からの照会。 そして、夜会に現れた“迎え”。 その日、選ばれたのは――どちらだったのか。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」と追放された令嬢——王宮の食器が一枚も焼けなくなった

歩人
ファンタジー
「お前の泥だらけの手で触るな、気持ち悪い」——王宮御用達の食器を焼く伯爵令嬢エルザは、婚約者の第二王子に手の荒れを嗤われて追放された。十二歳から十年間、王宮の全ての食器を手ずから焼いてきた。彼女の食器は特殊な土と焼成技術で魔力を通し、毒に触れると色が変わる。料理の温度も保つ。追放から三ヶ月後、晩餐会で新しい食器を使ったところ、毒が検知されず隣国の大使が倒れた。外交問題に発展する中、第二王子が「食器くらい誰でも焼ける」と窯に立った結果、出来上がったのは歪んだ灰色の皿だった。

美しい姉妹と〈三つ眼の聖女〉ーー妹に王子を取られ、私は簀巻きにされて穴に捨てられました。いくら、病気になったからって酷くありません!?

大濠泉
ファンタジー
 ある王国の公爵家に、美しい姉妹がいました。  しっかり者のお姉さんは王太子の婚約者で、結婚まで秒読み段階。  幸せの絶頂にいました。  ところが、突然、不幸が訪れます。  全身に醜い痣ができ、皮膚が爛れる、呪いにも似た奇病に罹ってしまったのです。  その途端、王太子も家族も態度を一変しーー。 ※ざまぁ系のストーリーです。 ※他サイトでも投稿しています。

娘を毒殺された日、夫は愛人と踊っていた――聖女と呼ばれた私は、王家を静かに崩壊させる

唯崎りいち
恋愛
異世界に転移し、“聖女”として王太子ジークフリートに嫁がされたフェリシア。 愛のない結婚の中で、唯一の救いは娘シャルロットだった。 しかし五歳の娘は、父から贈られたネックレスによって毒殺される。 娘が死んだ日。 王宮では祝賀会が開かれ、夫は愛人と踊っていた。 誰も娘の死を悲しまない世界で、ただ一人涙を流したのは、第八王子リュカだけだった。 やがてフェリシアは知る。 “聖女は子を産んではならない”という王家の禁忌と、娘の死の裏にある政治的思惑を。 ――これは、娘を奪われた聖女が、王家を静かに崩壊へ導いていく物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】捨てられた侯爵夫人の日記

ジュレヌク
恋愛
十五歳で侯爵家に嫁いだイベリス。 夫ハイドランジアは、愛人と別邸に住み、三年の月日が経った。 白い結婚による婚姻不履行が間近に迫る中、イベリスは、高熱を出して記憶を失う。 戻ってきた夫は、妻に仕える侍女アリッサムから、いない月日の間書き綴られた日記を手渡される。 そこには、出会った日から自分を恋しいと思ってくれていた少女の思いの丈が詰まっていた。 十八歳になり、美しく成長した妻を前に、ハイドランジアは、心が揺らぐ。 自分への恋心を忘れてしまったとしても、これ程までに思ってくれていたのなら、また、愛を育めるのではないのか? 様々な人間の思いが交錯し、物語は、思わぬ方向へと進んでいく。