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キルスト視点①

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 キルストは留学先の寄宿舎で本を読んでいた。
 天気も良かったので、テラスで読んでいたが、寄宿舎の女子生徒達から茶会に誘われる。

「キルスト様、私達とお茶会しませんか?」

 数人の取巻き(うんざりしている)が、キルストが1人に居るのを確認すると、ぞろぞろとやって来る。

「………本を読みたいんだ。悪いが1人にしてくれ。」
「そんな事より、我が家の召使いが新しい茶葉を用意しましたの。美味しいので、キルスト様に味わって頂きたいのです。」
「…………そんな事?…………俺から言わせれば、茶葉のがそんな事だ。今度の昇級試験でいい成績が欲しいのでね、邪魔しないでくれ。」
「キルスト様なら、いい成績取れますわ、ねぇ、皆様。」

 取巻きの女生徒達が代わる代わる、しつこく言ってくる。

(……………ホント、分からない馬鹿な女達だな。)

 キルストは立ち上がり、男子寮の方に入って行く。
 女達は、男子寮には入れない為、前を塞いだり腕を掴んだりしてキルストを阻む。

「………しつこいな!いい加減俺は君達に付き合うつもりは無い、と言っているじゃないか!」
「あ、キルスト!探したぞ!手紙を2通預かってる。」
(助かった!)
「今行く!……そういう事だ、失礼。」

 女達を振り切り、手紙を友人から受取、部屋に引きこもるキルスト。

(………父上と…………リザード?珍しいな、手紙なんて。)

 何となく、友人であるリザードからの手紙を開けるキルスト。

【親愛なる我が友キルスト。
 君に結婚話が持ち上がっているんだが、公爵から聞いてるかい?おめでとう。我が妹、アンジェリークを宜しく頼む。リザード。】

 アンジェリーク……ドラクロア国第三皇女。
 友人のリザードの妹。
 キルストがリザードの住む王宮に遊びに行くと、リザードと妹であるセシリアの後ろに着いて回ってくっついていた愛らしい皇女だった。

(アンジェリーク………。瞳がくりくりっとして、リザードとセシリアに可愛がられた子だったよな………。肖像画とか入れろよ、リザード!)

 可愛い印象しか無かったキルストは幾分興味が湧いていた。
 セシリアも綺麗な子ではあったが、アンジェリークの方をよく構っていた記憶もある。
 キルストは父からの手紙を開ける。

【キルストへ。
 イザーク陛下より、第三皇女アンジェリーク様の伴侶としてキルストを、と打診があった。留学中ではあるが、アンジェリーク皇女との席を設けるので、一時帰国するように。陛下は、キルストとアンジェリーク皇女がその気で無いなら、白紙で良いと仰った。会うだけ会いに戻りなさい。肖像画を同封する。】

 同封された肖像画を見たキルスト。
 肖像画ではあるが、愛らしい少女のあどけなさが残る美しく育った皇女の姿。

「!!!」

 見た途端、湧き上がる魔力を感じる。
 留学中という立場から、魔力を極力抑える事に徹したキルストは、一気に身体が疼いたのだ。

(お、治まれ!!駄目だ!ここで膨張するな!!)

 しかし、心とは裏腹に、下半身は熱を帯びる。
 急いで、キルストは魔法陣を部屋に張り、自慰する事で抑えた。

(…………アンジェリーク………会いたい。)

 キルストは、自慰で汚れた手を急いで洗い、ペンと紙を出す。
 実家の公爵家と友人リザードへ。
 そして、その日に返信をし、その夜には休暇届けを学校へ出し、翌日にはドラクロアへ旅立ったのだった。
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