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キルスト視点②
しおりを挟むキルストがドラクロアに帰国後直ぐ、父の公爵とイザークに挨拶に行く。
そこにはリザードも同席していた。
「……うむ、私の眼には狂いはなかったな。公爵とキルストが良ければ、第三皇女アンジェリークを嫁がせたい。勿論、皇太子リザードの婚姻後にはなるが……。」
「陛下、私共には異論はございません。こちらに伺う前にも息子とも議論致しましたので。」
「はい、アンジェリーク様が私の妻になる事、この上ない喜びでございます。」
「リザードも異論は無いのだな?」
イザークの執務室で面会の様子をイザークの後ろに控えていたリザードも話に入る。
「えぇ、私もアンジェリークがキルストに嫁ぐ事に反対等ありません。むしろ大変喜ばしい事と存じます。」
リザードは、キルストに笑顔を見せる。
その笑顔は不気味な笑顔。
(………何企んでるんだ?リザード……。)
「父上、私の婚姻相手も決まっておりませんが、余りにもアンジェリークがかわいそうで、早める訳にはいかないんでしょうか?」
「では、お前の伴侶を早く決めてくれればいいのでは?」
リザードが全くその気配が無い為に、痺れを切らしたイザークがアンジェリークの苦しさを見ているので相手だけでも決めたのに、皇太子が相手が居ないとなると、話が進まないのだ。
「…………私に合う美姫が居ないのですよ……。」
(……嘘だな、あれは……まだ独身を謳歌したいだけだろう……昔からリザードも女を侍らして遊んでたじゃないか。)
「………まぁ、いい……お前が女遊びしているのも知っているし、婚姻相手迄迎える気にはならんのは、その娘達が正妃に向いていないからだろう?私が探してもその気にならんのも困りものだがな……。20歳になる迄には決めてもらうぞ?」
「…………分かっております。」
(…………分かってらっしゃるなぁ、陛下も…。)
「キルスト…………皇太子がこうなのだ、暫く婚姻は出来ないが、其方も魔力が強く辛かろう……。そこでだ、アンジェリークの純血を守れるなら、魔法陣の塔への入室を許可をしよう。使い方は其方に任せる。アンジェリークとの婚姻迄純血を守れるなら……。」
「………分かりました。」
室内から出て、キルストはリザードの部屋に来た。
「………ところで、リザードは彼女と上手くいっているのか?彼女は正妃にはやはり無理なのか?
」
「……側室ならな……身分が平民という立場と正妃としての教養が無いから、と……。流石に俺もそう思うし……。教育はさせてはいるが、正妃を先に迎えろ、と言われてる。父上の様に、母上や側室を平等に扱える気もしないんだ。」
リザードにも好きな女が居て、彼女との結婚を望んでいるのだが……。
「聞かないのか?陛下に………平等に愛せるにはどうしたらいいか、と。」
「父上は母上に負担を掛けるから側室を迎えたんだ。母上もそれが分かるから側室との確執を持たないように心掛けてらっしゃるし、そういう関係が俺の場合出来るかが不安でね……。正妃を愛せるならそれでいいんだが、彼女以外愛せるかどうか………。」
「…………離婚は出来にくいからなぁ、王家は……。」
「………だから、父上にアンジェリークの相手にお前を薦めたんだぞ?俺が未婚のままだったら、王位継承者にアンジェリークをと、白羽の矢が当たるからな、公爵家なら皇女との結婚に申し分ないし、信頼してるキルストなら、王家も任せれる。」
「…………お前………そんな事思ってたのか!俺がアンジェに好意持ってたから、というお前なりの優しさかとてっきり!!」
「………まぁまぁ、落ち着けよ。好意を持ってたのを知ってたから、そこ迄の結論になったんじゃないか!俺にもチャンスかな、と……。」
「冗談じゃないぞ!アンジェとの婚姻に喜んでいた横での不気味な笑いの意味はコレだったのか!お前には絶対に王になってもらうからな!その為に俺もお前に協力するか、阻止か説得させるか決めさせてもらう!」
「阻止や説得は嫌だなぁ………協力で……。」
「お前次第だな。」
「………ところで………夜会だろ?今夜。」
「あぁ、そうだな。」
「…………ソレ、使えるかもよ?今夜。」
リザードは、入室許可書を指した。
キルストもそれを見る。
「一旦帰るんだろ?公爵家に……………アンジェリーク………夜会の前に塔に行くだろうなぁ……。夜会中に魔力膨張させる訳にはいかないから……。」
チラチラと塔の方向と入室許可書に視線を送る。
リザードは自分が都合の悪くなる話になり掛けた為に話を逸した。
「…………リザード…………。夜会の前に見てくる!ありがとな!!」
「…………協力したんだから、協力してくれないとな。」
慌てて出て行ったキルストに、リザードは呟いた。
そして、塔が見える森の中で、アンジェリークが窓際に全裸で慰めているのを見たのである。
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