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2話

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「チッ、おい。こいつ気を失ったぞ」

 レオはアリスの上にしゃがみ込み顔を見ると舌打ちをしてロバートとドミニクを見た。
 ロバートとドミニクも同じく苛立った様子でアリスを見ている。

 彼らは無抵抗の女性に暴力を振るったことに罪悪感は抱いておらず、むしろ「フィオナを虐めていたのだから当然だ」と考えていた。

 ちなみに、フィオナが虐められてたとき、持ち物を失うことはあったが、直接罵倒を吐かれたり、暴力を振るわれるといったことは無かった。
 この時点で「フィオナがされたことをやり返してやる」というのを逸脱しているが、暴走した彼らは気づいていない。

「ふん、まぁ構わない。取り敢えず教科書を裂くぞ。フィオナが受けた苦しみをコイツに理解させてやるんだ」
「りょーかい。……ん? なんだこのペンダント」

 レオはアリスの胸元にかけられたペンダントを見つけた。

 それはアリスの宝物であり、幼い頃両親から貰った命の次に大事な物だった。
 しかしレオはそんなことを知らない。
 いや、知っていれば喜々として奪ったのかもしれない。

「ちょうどいいぜ。これもブチ壊してやるか」

 レオはニヤリと笑う。
 そしてアリスの胸元からペンダントを引きちぎった。



「うっ……」

 目が覚めた。
 目に入ってきたのは白い天井と、私の周りをぐるりと囲む白いカーテン。
 私は今ベットに寝かされているようで、レオに殴られた頬にはガーゼが貼ってあった。

 私はここがどこかを理解した。
 ここは医務室だ。

 レオに暴力を振るわれて気を失った後、私は医務室に運び込まれたらしい。
 王子たち三人が運び込む訳がないので、そこら辺にいた生徒に命令したのだろう。

「あれ……?」

 おかしい。
 私の首にかけてあったペンダントが無い。
 あれは大事なものなに。

 そこで私はロバートの言葉を思い出した。

『お前がそのつもりなら、フィオナがされたことをお前にもやり返してやる!』

 私はハッと顔を上げた。
 そしてベットから飛び出した。
 まだ意識は朦朧としている。

 けど、あれは大事なものなんだ──。

 ガラッ!と教室の扉を勢い良く開ける。

 机の上には、ビリビリに引き裂かれた教科書が置いてあった。
 ロバートたち三人がニヤニヤと笑ってこちらを見ている。

 私は悟った。
 彼らの言う復讐が始まったのだと──。
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