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1 あ、花嫁を祝福してない系?
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抜けるような青空。
燦燦と降り注ぐ太陽。
分厚い潮風が帆をはためかせ、貴婦人たちのドレスもはためかせ、あちこちでワーキャー楽しい悲鳴があがっている。
ここは海上国家アリプランディのマリッジ領域。
もう十何年、船上結婚式が流行っている。
そして私、レンテ伯爵令嬢ルチア・ティラドは本日、マッサーリ伯爵イルミナート・ディ・パルマ卿の妻になりましたぁ~♪
「おめでとうルチア!」
「おめでとうございます! マダム・マッサーリ!」
「マッサーリ卿! こんなに可愛い奥様なのですから、大切にしなければ地獄に落ちますよ!」
「おめでとう!」
「「おめでとうッ!!」
祝福の、嵐。
少し年上のイルミナート卿と婚約して1年半、とても大切にしてもらった。これから先も、私は幸せな人生をこの人と歩んでいくのだろう。
どんな荒波だって、二人なら越えていける。
そんな希望に満ち溢れ、純白のウェディングドレスから、ヒマワリ色の元気で可愛らしくでもそれなりに洗練されているカクテルドレスに着替えてのパーティー。
幸せ一色のお祝いだから、みんな弾けちゃって正にこの世の楽園状態よ。
「ルチア!」
「んまぁっ、ルチア! 結婚したっていうのになぁんて可愛いの!!」
「こんなところにいてはいかん! 世界一幸せなマッサーリ伯爵を、人類史上最高に幸せな夫にしてやりなさい!!」
神父様も、もう出来上がっちゃって陽気の極み。
私はたくさんの祝福を受けながら、パーティーを楽しむ愛しい皆さんの間を縫うように歩いて、夫を探した。と、その時。
「お姉様」
妹の声がして、私は反射的に振り返った。
二つ下のフラヴィアは、私より背が高くて落ち着いていて頭もいいので、並んでいるとむしろ姉にしか見えない頼れる妹だ。
「フラヴィア! よかった」
「おめでたいお姉様がこんなところでひとりで右往左往していてはダメよ。さ、こっちへ」
「ええ」
差し出された妹の手を掴み、私は有頂天で後を追った。
そして「おや?」と思った時には、奇跡的に人気の無い甲板のヘリに立っていた。
「?」
分厚い潮風が、私の髪をふぁさぁ~っと解いた。
妹のシックなドレスのレースがはためく。
「どうしたの? 秘密の話?」
「お姉様」
「イルミナート様のところへ戻らないと、心配し──」
「お姉様の幸せ」
妹にしては珍しい、有頂天な恍惚とした笑顔。
その目がギラリと鋭く光った。
そして赤い唇が、別れの言葉を高らかに奏でた。
「ぜぇ~んぶちょうだい♪」
トンッ!
「え?」
燦燦と降り注ぐ太陽。
分厚い潮風が帆をはためかせ、貴婦人たちのドレスもはためかせ、あちこちでワーキャー楽しい悲鳴があがっている。
ここは海上国家アリプランディのマリッジ領域。
もう十何年、船上結婚式が流行っている。
そして私、レンテ伯爵令嬢ルチア・ティラドは本日、マッサーリ伯爵イルミナート・ディ・パルマ卿の妻になりましたぁ~♪
「おめでとうルチア!」
「おめでとうございます! マダム・マッサーリ!」
「マッサーリ卿! こんなに可愛い奥様なのですから、大切にしなければ地獄に落ちますよ!」
「おめでとう!」
「「おめでとうッ!!」
祝福の、嵐。
少し年上のイルミナート卿と婚約して1年半、とても大切にしてもらった。これから先も、私は幸せな人生をこの人と歩んでいくのだろう。
どんな荒波だって、二人なら越えていける。
そんな希望に満ち溢れ、純白のウェディングドレスから、ヒマワリ色の元気で可愛らしくでもそれなりに洗練されているカクテルドレスに着替えてのパーティー。
幸せ一色のお祝いだから、みんな弾けちゃって正にこの世の楽園状態よ。
「ルチア!」
「んまぁっ、ルチア! 結婚したっていうのになぁんて可愛いの!!」
「こんなところにいてはいかん! 世界一幸せなマッサーリ伯爵を、人類史上最高に幸せな夫にしてやりなさい!!」
神父様も、もう出来上がっちゃって陽気の極み。
私はたくさんの祝福を受けながら、パーティーを楽しむ愛しい皆さんの間を縫うように歩いて、夫を探した。と、その時。
「お姉様」
妹の声がして、私は反射的に振り返った。
二つ下のフラヴィアは、私より背が高くて落ち着いていて頭もいいので、並んでいるとむしろ姉にしか見えない頼れる妹だ。
「フラヴィア! よかった」
「おめでたいお姉様がこんなところでひとりで右往左往していてはダメよ。さ、こっちへ」
「ええ」
差し出された妹の手を掴み、私は有頂天で後を追った。
そして「おや?」と思った時には、奇跡的に人気の無い甲板のヘリに立っていた。
「?」
分厚い潮風が、私の髪をふぁさぁ~っと解いた。
妹のシックなドレスのレースがはためく。
「どうしたの? 秘密の話?」
「お姉様」
「イルミナート様のところへ戻らないと、心配し──」
「お姉様の幸せ」
妹にしては珍しい、有頂天な恍惚とした笑顔。
その目がギラリと鋭く光った。
そして赤い唇が、別れの言葉を高らかに奏でた。
「ぜぇ~んぶちょうだい♪」
トンッ!
「え?」
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