風説 戊辰女性剣士中澤琴
時は幕末。日本を植民地にと企む欧米列強の戦艦が黒光りする大砲を陸地へ向け押し寄せていた。攘夷(異人排斥)では一致していたが、国内では体制を維持し外敵に備えるというそ佐幕派と天皇を中心とする体制を築く尊皇派が厳しい対立をしていた。
将軍家茂が上洛するためのせ先遣隊が募られ二百を超える浪士が参集したが後に新選組を結成する近藤勇や土方歳三もいた。上野国(福島)からやってきたのは中澤貞祇と男装の妹琴。史上初の女性剣士誕生である。
父の孫右衛門は法神流剣道の創始で、琴は竹刀を玩具にして育ってきた。
先遣隊は将軍の一行より一日早くし出発し、奥州街道から中山道へと移動した。道中、富士を見ながら土方は言った。
「富士は大きいが人は努力すれば富士より大きくなれる。」と。
琴はそんな土方に心を魅かれた。
京に着くと隊長の清川が皆を集めて偏列を始めいきなり切り出した。
「我々が目指すのは尊皇攘夷である。江戸に戻り徳川幕府を倒す。」
正体を表したのである。
芹沢鴨や近藤・土方などが席を蹴り退場した。
琴は土方と行動を共にしたかったが兄が動かないので自重した。入隊を誘った佐々木只三郎が言った。
「清川は江戸を火の海にするつもりだ。そうはさせん。我らが江戸を守る。京は近藤さん、土方さんに任せよう。」
夜、宿にやってきた土方が琴に言った。「必ず会える日が来る。」と。
江戸に戻った清川は資金を得るため夜中に商家に押し入り大枚をせしめたが只三郎・中澤兄妹に斬り倒され一派は壊滅した。
琴たち徳川派は江戸を守る新徴組を設立し、昼夜を問わず奮闘した。
天狗党事件など幕府から追われていた相楽総三は薩摩邸に匿われ、鹿児島から送られてくる西郷吉之助(隆盛)の指示に煽られ配下達に火付や暴行を指示していたがそれも露見し新徴組を預かる米沢藩は薩摩邸を急襲した。琴に斬られじ重傷を負った相楽は妻の命乞いで一命を取り留めた。
そうして、戊辰戦争の幕が切って落とされた。
戦いに敗れた新選組が引き上げてきて琴は土方と再開した。土方は夢を語った。
「北の大地で牛や馬を育て、琴を迎えに来る。」
江戸城は無血開城され、琴は故郷の利根村に戻ったが土方が参戦している箱館戦争は終わらない。
琴は再び旅立った。蝦夷には凶暴な獣達が牙を剥いている。
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