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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第110話 康太君の無茶振り (4)

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「始めまして。ファッションショーのリハーサルでお伺いしました佐々木と申します。本日は宜しくお願いします。」
「「「お願いします。」」」
全員が紺色のジャージを着た、見るからに田舎者の集団。
この名門私立桜泉学園には相応しくない、なんとも場違いな連中であった。

「あぁ、横田から話しは聞いている。
私は私立桜泉学園生徒会副会長の皇一すめらぎはじめだ。
しかし、君たちが本当に彼が言っていた今回のモデルなのかね?
申し訳ないが、とてもモデルと言った様には見えないのだが…。」

先頭に立つ、おそらく代表であろう者が頭を掻きながら答えを返した。

「いや~、そう思われるのも無理はないと思います。自分たちは"個性が乏しく、尚且つ筋肉質である者"と言う条件のもと集められたと聞いています。
何でも現在のモデルたちは顔が良く魅力があり過ぎて、肝心の服より彼らに目が行ってしまう。服をより良く魅せる為の試みらしいですよ。私たちも余り詳しく聞かされてないので何とも言い様がないのですが…。」

苦笑いをしながらの物言いに、なるほど確かに彼らならばその目的に合致すると、妙に納得する。
先ほどより彼ら自身よりも紺のジャージの印象しか残らないのがその証拠だろう。

「なるほど、話しは分かった。案内の者を付けるから、後はその者に聞いて欲しい。田中、後は頼んだ。」
「はい、畏まりました。では皆さん、こちらへお越し下さい。」

案内の者の後に続く彼ら。 
"Sin"のモデルとしてどの様なものたちが来るのか。期待と不安が入り交じっていたが、蓋を開ければデザイナーの実証実験。
"今回のショーは我々の手で成功させなければ。"
この場に残るものたちは心を一つにするのだった。

「男子生徒の皆様、お疲れ様でした。部室にてお飲み物を用意してありますので、そちらにてお寛ぎ下さい。
引き続き、チーム黒子の皆さんのリハーサルに入ります。準備の方よろしくお願いします。」

先ほどの集団は、チーム黒子と言うらしい。
軽快な音楽と共に本番衣装を身に纏い、チーム黒子が現れる。ランウェイを進む彼らは、その印象とは裏腹に見事な"歩き"を見せている。その動き一つ一つに、しっかりとした意思が宿っている。
不自然さのないマネキン。
没個性による着衣の強調の試みは、見事に成功していると言えるだろう。
だがやはり"華"がない。
ショーの成功は我々桜泉学園の者たちに掛かっている。

「彼らと我々では求められる役割が違う。皆本番に向け気を引き締める様に。」
「はい、皇様。」
さあ、ショーは目の前だ。
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