花嫁泥棒は祝砲を撃つ
空に海が浮かぶ世界。祝いの花火を撃つ職人サラは、大商家の結婚式で四百八十ルゼの仕事を終えるはずだった。
ところが試射の前、火薬箱に座っていた花嫁が言う。
「私をここから盗んでくれませんか」
体を帯のように畳める相棒バルカと小舟を出したサラを待っていたのは、空中の市場、落下する雨、熱と光へ群がる生き物。そして彼女より上手く鏡の魔法を使う追手だった。
目的地で道具を取り戻せば終わる。そう聞いていた仕事には、まだ帰れない人たちの名前が隠れていた。
見えるだけの光には人を支える重さがない。けれど本物の手が届く時間なら作れる。
逃げる花嫁と祝砲師が、自分で選ぶ明日へ向かう冒険譚。
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