壁のシミを育ててみたら 203号室の怪物
築40年の木造アパート「コーポ松風」の片隅で、息を潜めるように暮らすコンビニ店員・須藤健太。夢も友人もなく、騒音を撒き散らす隣人に怯える彼の日々の慰めは、斜め向かいの部屋に住む女子大生・吉永真由美への密かな憧れだけだった。
ある雨の夜、健太は自室の壁に「人の顔」のような奇妙な黒いシミを見つける。 孤独のあまり、彼はそのシミに「シミー」と名付け、残った牛乳を与え、日々の愚痴を語りかけ始める。 ただの汚れだったはずのシミーは、健太の歪んだ愛情を吸って急速に成長し、やがて壁から抜け出して動き回る「不定形の怪物」へと変貌する。
「パパ、静カニナッタ?」
シミーは健太を守るため、隣人を捕食し、健太の欲望を叶える「最強の共犯者」となった。 しかし、怪物の学習能力は健太の制御を超えていく。 健太が真由美に抱く「好き」という感情を、シミーは「食欲」と混同し、彼女を標的として認識し始めたのだ。
「パパノ好キナモノ、ボクモ食ベタイ」
暴走する怪物と、それを生み出してしまった孤独な男。 憧れの女性を守るため、健太が下した究極の決断とは——。 壁一枚隔てた日常が、黒い粘液に侵食されていく。戦慄と悲哀の育成ホラー・サスペンス。
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