等身大ヒロイン 小説一覧
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世界が平和になって、俺の「役割」は余った。
彼女は、ずっと憧れてきた「お嬢様」を、ようやく始めたところだった。
激務の任務から解放され、「必要とされる仕事」を失った元エリート・アッシュ。
長期休暇に入り、勉学の賞金で両親を説得し、「お嬢様ごっこプロジェクト」を立ち上げた優等生リリー。
平和な王都の広場で交わされたのは、少しずれていて、でも真剣な契約でした。
――一、優雅に。
――二、楽しく。
――三、対等で。
仕立て屋でのドレス選び、市場散策、庭園のベンチ、雨やどりの軒下、美術館の窓辺の絵。
「お嬢様」と「執事」のごっこ遊びは、
やがて「自分の望みがわからないままでも隣にいていい」という、
ささやかな条文をふたりの胸に刻んでいきます。
街のため、国のため、誰かの期待のため。
そのどれでもありながら、「自分の願い」がまだ言語化できないふたりが、
ゆっくりと“途中のまま”歩調を合わせていく、
叙情シリアス寄り・ほの甘契約恋愛物語です。
文字数 10,640
最終更新日 2025.12.07
登録日 2025.12.07
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ゲームのロビーは夕焼け色に輝いていた。
星の髪飾りを揺らす赤髪の神咲舞愛梨沙、青い瞳の山賀鈴芙美、紫のツインテールを結う波風ノエル。三人の笑い声は突然のノイズに遮られ、世界の崩壊とともに異世界へと散り散りに落ちていった。
目を覚ましたとき、彼女たちはそれぞれまったく違う土地に立っていた。
手元にあるのは、制服と日常の記憶、そして自分の名前だけ。
パン屋で働いて腹を満たし、冒険者ギルドに名を登録し、森で息を潜める。そこにあるのはゲームではなく現実の手触り――雨に濡れたスカートの重さ、転んだ膝の痛み、胸を揺らす不安。すべてが本物だ。
けれど同時に、笑いと温かさも確かにある。配達で人に感謝されること、子どもにからかわれて照れること、仕事をやり遂げた夜に灯る小さな自信。
失敗すれば笑われ、怖さに立ちすくんでも、それでも一歩を積み重ねる。
三人はそれぞれの場所で「今日を越える」ために足を前へ踏み出す。
その先に待つのは再会か、それとも別れか。
コメディで笑い、リアルで痛む――等身大の少女たちが、それぞれの一日を生き抜いていく冒険が、いま始まる。
文字数 35,297
最終更新日 2025.10.11
登録日 2025.10.07
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